男子高校生の体調不良集 part2

過呼吸　1 ページ30

陵side


エレベーターが苦手だと感じたのは、小学生の頃だった。

父の転勤で、一戸建ての家からマンションに引っ越したとき。

初めて一人でエレベーターに乗ったんだけど、あの狭くて閉め切った空間が怖くて。

一度怖いと感じてからは、エレベーターでは無く階段を使うようになった。

エレベーターなんか使わなくても生きていけるし、今の寮にはまずエレベーターがない。

それに何だかカッコ悪いし、恥ずかしくて誰にも言ってなかった。


……のを、すごく後悔するなんて。









「陵！ちょうど良いところに！」


授業が終わり、放課後。

大量の資料を持って廊下を歩いて来たひろに捕まった。


「…何？面倒なことはお断りだけど？」


嫌な予感に、思いっ切り顔をしかめながらひろに聞く。


「これ資料室まで運ぶの、手伝ってくんね？」


予想通りの答えが返ってきた。

正直面倒だけど、確かに一人じゃ大変そうな量。

俺はため息をつき、仕方なくひろの手から半分ほど資料を取った。


「よっしゃ、行こうぜ」


「ねぇちょっと待とうか。俺手伝ってあげてるんだけど？」


先を歩き出そうとしたひろに、にこりと笑ってみせる。

ひろがう、と目を泳がせた。


「何か言うことあるよねー？あ、わかんない？ひろの頭じゃわかんないかなぁ」


ひろがこういうこと言うのを苦手だと知っていながら煽る俺。我ながら性格悪いと思う。

でも、ひろってからかうのたのしーんだよね。

反応が初々しくてかわ………違う、面白い。


「……がと」


ひろが小さく呟いた。


「ん？聞こえないなー」


本当は、何て言ったのかくらいわかるけど。

ひろが俺を睨んでくる。

俺は素知らぬふりをして首を傾げた。

ひろが舌打ちする。


「ありがとって言ってんの！」


そう叫ぶと、先に走って行ってしまった。

その彼の頬は、真っ赤になっていたような。

俺は小さく笑いをこぼし、走って行ったひろを追う。

資料室どこにあったっけ。全然行ったことないや。

見失ったらヤバいな、と思い、俺は彼に追いつこうと速度を上げた。




　

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