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...tadayoshi
「一応。おかんから月一回は電話かかってくるし。」
当たり障りのない会話しかせえへんけど。
信ちゃんから目を逸らして、トマト缶の蓋を切る。
「そか。...まあ、タツがその気になったらでええけど、ぼちぼち考え。
家族の問題ってずっと逃げてもいられへんし。」
信ちゃんの声は優しかったけど、心に重くのしかかってくる。
「うん。わかっとる。」
わかってんねん。
家族の問題だけやなくて、俺の問題でもあることは。
けど、どうやって、どこからどう変えてけばええのかもようわからへん。
「ま、焦らずゆっくり考え。まだ若いんやし。
てか、それ、何つくっとんの？アマトリチャーナ？」
「ちゃうわ。ただのボロネーゼ。」
「アマトリチャーナちゃうんか。」
アマトリチャーナを知ってることを主張するように無駄にアマトリチャーナを口にする信ちゃん。
正直、信ちゃんとアマトリチャーナって似合わへんけど。
『ただいまー！』
アマトリチャーナと信ちゃんを頭の中で並べとったら、玄関から声がした。
あ、Aちゃん帰ってきたんや、て心なしかテンションが上がってたのに、
「ただいマントヒヒは空飛ぶパンダ！」
最初にリビングに入ってきたんは相変わらずよう分からへんことしか言わんマルちゃん。
これでも一応大学生やし年上やけどまったくそう思われへん。
「帰ってきて早々やかましいわ！」
すかさず突っ込む信ちゃん。突っ込むべきとこはそこだけやないと思うけど。
「ごめんね！大倉くん！全部任せちゃって！」
マルちゃんの後ろからでてきたAちゃんに俺の視線はすぐ動く。
「いや、全然。大したもん作ってへんよ。」
「もしかしてボロネーゼ？私大好き！」
俺の手元を覗き込んで嬉しそうな声をあげるAちゃん。
大好き、て。
しかもこんな近くで。
俺が言われたわけちゃうのに、ドキドキしてしまうやん。
あくまでも言われたのはボロネーゼやのに。
ボロネーゼが羨ましい。
多分ボロネーゼに羨ましいなんて思ったの世界で俺が初めてやと思う。
とか、アホやな俺。
「たっちょん、なんか顔めっちゃ赤なっとるけど。」
「えっ、なってへんて！変なこと言わんといて！」
「トマトの蒸気ちゃう？」
焦る俺に不思議そうな顔をする丸ちゃん。
丸ちゃんがアホで良かったわ。
...
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作者名：まりこ | 作成日時：2017年7月12日 14時
