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...tadayoshi
Aちゃんのこと好きかもしれないって、
そう気づいたからといって何が始まるわけでもない。
まず、出会ってから一週間の女の子を好きになるのと自体前代未聞やし、
そもそも、好きな子が出来たのも中学生ぶりくらいやし。
付き合いたいとか、そういうんは特になくて。
同じ家おるからそう思えるのかわからへんけど、
とにかく、何も変わらへん。
鍋に玉ねぎを加えて、八の字を描くように混ぜる。
温まった鍋に何かを加えた時のジューって音が好き。
「なぁ、タツー。」
いつものようにソファに座って本読んどる信ちゃんが話しかけてきた。
信ちゃんって、すばるくんとか横山くんに比べていつでも家におる気ぃするけど、
いつ仕事しとるん？
ていうか、ちゃんと仕事しとるん？
なんて口に出したら怒られそうやし聞かれへんけど。
「ん？」
玉ねぎの色が変わってきたから今度は解凍しといた合挽き肉に手を伸ばした。
「Aのことどう思う？」
「えっ！？は！ちょ、何でいきなり？」
焦って合挽き肉の入ったパックを落としそうになる。
「え？何慌ててるん？
A、無理してそうやったり居心地悪そうやったりせえへん？って話やけど。」
信ちゃんが不思議そうな顔で俺を見てきた。
う、わー。
墓穴掘ってもうた。うわ、最悪や。
「あ！そういうことな！
動揺するて。そんなこといきなり聞いたら。」
慌てて取り繕うけどもう遅い。
信ちゃん何にでも無駄に鋭いし、絶対勘付かれてまう。
かと思ったら、
「まあせやな。お前案外女子に免疫ないもんな。
モテるくせに彼女ずっとおらへんし。
イケメンやからって選り好みしとったら一生結婚できへんようなるから気いつけ！」
なんか納得されとるし。
しかもいらん助言まで。
そういう信ちゃんはどうなん。女の影とかまったくあらへんけど。
と心の中で呟く。
「で、どうなん？Aと一番一緒におるのタツやから、聞いてみたんやけど。」
一番一緒におる、か。
なんか、嬉しい。
「ここの生活はほんまに楽しいて言うてたで。
特に、無理してそうとかそういう感じはせえへんけど...」
...
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作者名：まりこ | 作成日時：2017年7月12日 14時
