1050年の時をこえて実った恋物語～終わり～ (ページ31)

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∽ 脈打ツ　それハ期待カ高揚カ　その三 ∽ ページ31

右肩が痛い――。
膿んでしまったのか、それとも気が弱っているからか。
らしくない、と寝返りを打つ。
外が明るい事に気がつき、重たい瞼を開ける。
眉間に皺を寄せながら、窓へ歩み、カーテンを開け、空を見上げる。
丸い月――が、青白く輝いている。
身震いをした私は、窓から離れ寝床に着く。
ふと、背筋が凍るような感覚がして、急いで飛び起きる。
窓の方には、素朴な着物を着た女性が立っていた。
口元は笑みを浮かべて、私を見つめている。
女は何も言わずに微笑みながら、そこから動こうともしない。

「…………なに、あなた……」
『ごめんなさいね、私のせいで』
「……………どういうこと？」
『時間がないの。貴女にこの術を伝えるわ』
「は…………！？」

突如襲う強烈な頭痛に、まるで脳がかき回されているような錯覚に陥る。
気分が悪くなり、吐き気がやってくる。
その中で見えてくるのは、紛れもない術式。
この術式を知らない私でも、そこから推測するに、これは相当危ない術式である。

「…………こ、これ………なに……………？」
『それは貴女だから使えるものよ』
「……ぅ……！」
『全てを知らなくていいの。理解しようともしなくていいの。ただ、救えるのは貴方だけ―――それだけ、覚えていて欲しいの』
「………ま――………」

あまりの痛さと膨大な情報量に、私の脳は起きている事を拒絶し始める。
睡魔が優しく私の瞼を下ろす。
待ってちょうだい、あなたは誰なの？
私と何が関わっているの？
眠りに落ちる中、確かにその女性が答えたような気がした。

『――私は葛の葉。清明の母であり狐の妖怪――』