∽ 深ク刻まれた呪イ 紋狐青火 その八 ∽ ページ28
「あたしに何用か」
――炎華。
鮮やかな朱色の衣に身を包んだ女性と窺える人物が、几帳越しに問うた。
当の炎華は、正座をし、そのまま頭を下げていた。
「聞きたい事がございます」
「申せ」
「紋狐青火を行った訳を存じたいと申します」
「･･････簡単な話じゃ、炎華。あの血筋をみすみす逃しはしまい」
「･････････それだけでしょうか」
「･･･お主は、真に愛らしい奴じゃの。炎華」
「は？」
ここで初めて、炎華は自身の頭を上げた。
そこには―――、正確には目の前に、几帳の向こう側にいたその人物が自身の目の前にいたのだ。
その人物が自身に注ぐ視線は、過去に一度――向けられた覚えがあった。
「っ！」
身の危険を感知したが、遅かった。
自身に降り注ぐ視線に一瞬だけ、恐れたからだ。
「ああ、炎華様ッ―――」
ぐったりと倒れた炎華を抱き寄せながら、女は恍惚とした表情を口元に浮かべる。
十二単の様な――豪華な着物の下から見える獣の尾、顔は狐の面をしている。
「ああ･･･、ああ！炎華様ッ！！待っていて下され、我が愛しき人！！」
しばらくの沈黙の後に、女は口を開く。
「豪雷、氷冷」
「「は。お傍に」」
「こやつを地下牢へ―――」
長く赤い爪をした手で仮面を取りながら、女は次の指示を出す。
「時は満ちた故に始めよう」
∽ 脈打ツ それハ期待カ高揚カ その一 ∽→←∽ 深ク刻まれた呪イ 紋狐青火 その七 ∽
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作者名：†血染 架朱† | 作成日時：2015年6月27日 21時
