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∽ 深ク刻まれた呪イ 紋狐青火 その六 ∽ ページ26
黒い腕はしっかりと、何かを掴んでいた。
考えるとぞっとするような、私は苦しさと困惑で頭が混乱していた。
『二人もいらないのよ――、一人で十分よ――』
冷たく美しい声が、私の体の内側から聞こえる。
――祓わなければ。
周りをふと見渡すと、部室ではなかった。
木造の屋敷かなんかの様であった。
目の前には黒い腕の主と思われる影が一つ。
先程の声は、その影から聞こえる。
『あの方は、あたしだけのもの――』
腕が私の体の中でうごめく。
何とも言い表しにくい、苦しみに声も出ない。
『忘れてしまいなさい、全部、全部全部――』
鼓膜を震わす、何かが千切れる音。
鈍く低い音が、一つ、一つと奏でるたびに、息が苦しくなる。
引き千切られる音は、何とも不快に過ぎない。
ふと。
音が何度も何度も聞こえる度に、何かが消えていくような感覚に捕らわれる。
「(何かが、消えていく――･･･)」
意識が朦朧とした瞬間、劈く悲鳴で手放しかけた意識が戻った。
見覚えのある場所に、光の人影。
人、ではない。相変わらず、獣の耳がついている。
先程の黒い影も、似たようなものが。
「･･･あなたは？」
誰――？
その疑問が声にならないまま、私の意識は現実へと戻された。
「･･････」
あれは一体誰なんだろうか。
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作者名：†血染 架朱† | 作成日時：2015年6月27日 21時
