∽ 好敵者ノ土地ニ 参ル その十 ∽ ページ46
?Side
「ふぅ･･････」
男は一人、ため息をついた。
昔と今には、当たり前のように変わっている。
人々が豊かになりたいと思えば、この世が便利になればと思えば、
技術が発展して、世界はそれで溢れかえっている。
しかし、変わらぬものもあるだろう。
変えてはならぬと思う者が、この世界に一人でもいるだろう。
変えてはならないのには、理由がある。
それを小さき者がどれだけ大きい者に豪語しても、揉み消されるだけだ。
やはり、ここはわからせてあげないとな。あのへこへこ爺には、任せてはおけない。
「･･････来たか」
うっすらと目を開け、男は庭に目をやる。
誰もいない。何もいない。
これはこれで、目に見えないだけであって、実際は気配が感じ取れる。
「懐かしいですね、主」
「ちーす!」
「そんな挨拶は無礼ですよ」
三つの声が庭から聞こえる。男は静かに目線を移した。
微かに見える月に手をかざし、ふっ･･･と横に振った。
すると、月の光が強くなる。雲が、月から消えたからだ。
「にしても、姿は変わらないんですね 相変わらず子どものまま」
「だから、無礼ですってばっ！！」
「相変わらずだな、そちらも」
目を細めて、男は笑う。
「何の用件ですか、主」
「うむ、まぁ･･･ちと簡単なことよ」
「うわぁ、懐かしい響き!」
「おっと、昔の癖が･･･」
男はまた、笑う。
「なんか、嫌な予感がしますけど･･･」
「いやいや、今回は楽しいぞ」
男は、意地悪く笑う。杯に入った酒を、くいっ、と飲み干す。
それから、庭に向かって話す。
「主、本気ですか」
「本気も何もないだろう」
「うわぁ、楽しみなんですけどっ!」
「なんか･･･、いいですね」
三人が嬉嬉としている様子を、満足そうに男は見ている。
「飲め」
「え･･･」
「毒なんか入っていないぞ、さ、飲め」
「主が言うなら･･･」
「遠慮なく!!」
「ありがたく、いただきます」
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作者名：†血染 架朱† | 作成日時：2013年11月23日 10時
