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最後の夜 ページ29

クルーの一人が予約した店は、あまり畏まった程のフォーマルさではないものの、それでいて誰もが気兼ねなく入れないような絶妙なバランスの雰囲気だった。翼の漆黒コーデと梅澤のセクシーな黒いドレスも浮く事なく、モノトーンを基調とした店内で見事にハマった。アルコールが回って傷が痛み出すのを危惧して翼は終始ジュースを飲みその代わりに梅澤が無理の無い程度で酒を楽しむ。

宴はなんのトラブルもなく、予定の時間を少し回った頃にお開きとなった。クルー達は二次会に行きたがるような素振りをチラリと見せたものの、翌日も運転をすると言う理由からホテルに戻る旨を話す翼に気を遣って、全員がホテルに戻った。

翼は部屋に戻りジャケットだけを脱いでベッドに仰向けで寝転ぶ。そひて思い返すのはパーティーの食事ではなく梅澤が無事に戻ってきてくれた事。それさえ叶えば自分の傷など翼にとってどうって事なかった。

そんな梅澤が翼の部屋を訪ねて来たのはそのままの体勢でうたた寝をしていた時である。頼んでもいないルームサービスかと思って扉を開けると、さっきと同じドレス姿の梅澤が立っていた。

美波「最後の夜は、一緒にいたかったので」

顔を赤くしながら俯く梅澤は何処か幼くそれでいて真っ黒なドレスが妖艶な大人っぽさを演出する。翼にしても最後の夜をこのまま寝てしまうのも面白くはなかった、二つ返事で梅澤を自室へ通すとドリンクのルームサービスを頼んだ。カクテル、そしてジュースをそれぞれ注文して翼はソファに座った。程なくして二つのドリンクが届けられ、二人は静かに乾杯をした。大きな窓からは月が見え、ホテルのプールが煌びやかに光っている。楽しかった撮影も今日が最後と考えると、梅澤は無性に寂しくなってしまった。

美波「なんか、楽しい時ってあっという間ですね」

言って欲しくなかった言葉を梅澤に先越され、ジュースを飲む手が止まる。誰かの写真集の撮影に帯同する時は、いつも同じような心境に陥る。旅行でしか行けないような素晴らしい場所、息を呑むほど綺麗な土地がそうさせてしまっているのは分かっているが、その時に深くなるメンバーとの絆がいつだって翼の後ろ髪を引くのである。

貴「なかなか良かったな、オーストラリア。もう正義のヒーローごっこはゴメンだけど」

期間を思い返しどれを取ってもかけがえのない思い出としてピカピカに光っていて包帯を巻いている生傷さえ愛おしく思えて仕方がなかった。

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- 面白いです!続きが気になります! (2月15日 11時) (レス) id: 05eb6baf46 (このIDを非表示/違反報告)
- 続き待ってます (2023年2月13日 19時) (レス) @page4 id: e8039f9ffd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:TSUBASA | 作者ホームページ:http://exiledaisuki0113  
作成日時:2023年1月21日 18時

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