squall ページ21
オーストラリアの雄大な自然を象徴する自然公園は、夕陽の光も相まって幻想的な景色を見せつけてくる。ふと、現地に来てからそれっぽい事をしていないことに気づいた翼は車内で待機していたクルーに断りを入れ梅澤と二人っきりで公園を歩くことにした。
貴「来るか?」
訊ねてくる翼に梅澤は二つ返事でついてきた。店で二人っきりのディナーも良いが今の梅澤はこういった何気ない二人の瞬間を欲していた。夕暮れの公園で二人っきりしかも目の前には世界有数の大自然が広がる。
貴「あんまりはしゃぐなよ」
子どものように自由奔放な梅澤を翼がまるでしつけをするかのように制する。日本人男性の平均身長に迫る長身美女が飛び跳ねるのは、大柄な体型の人々が多いオーストラリアでも目立ってしようがない。
美波「だってオーストラリアですよ!?しかも二人っきりで」
どういう思考回路で物事を言っているのか梅澤の脳内が若干心配になってきた。
だが、見える自然がオーストラリアなら天候もオーストラリアである。日本の夕立とは比にならないスコールが、なんの前触れもなく二人に襲い掛かった。それも運悪く、二人が車から歩いてだいぶ行った頃だった。土砂降りの雨の中、一直線に車に戻る事が不可能と判断した翼は、道中に屋根のあるちょっとした建物があった事を思い出すと、梅澤の手を引いて駆け出した。
貴「少しおさまるまで、ここで待機だな」
濡れた髪をかき上げる翼は離れた車にいるクルー達に連絡をとる。梅澤も同じくビショ濡れで髪を全て後ろに持っていき一つにまとめてポニーテールにした。外はバケツをひっくり返したように雨が叩きつけ、ひっきりなしに雷鳴が轟く。その度に梅澤は身体を震わせ耳に手を当てて塞ぎ込む。そんな彼女だがチェック柄のスカートは雨に濡れ脚に張り付き、純白のシャツには下着の色が浮き出ているのを知らない。クルーとの連絡を終えた翼は彼女に眼をやった瞬間からその様子を察知した。
貴「美波、透けてるぞ」
このままでは何かが危ないと判断し翼は自身が着ていたジャケットを梅澤の肩にかけた。いつも翼が使っている香水の匂いが微かに香るジャケットは、濡れてはいるものの透けた服のカモフラージュにはもってこいだ。
美波「そういう眼で見るからですよ」
梅澤は悪戯に翼の二の腕を突ついた。二人は透けた服を笑い合って雨が弱くなるのを待った。
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ま - 面白いです!続きが気になります! (2月15日 11時) (レス) id: 05eb6baf46 (このIDを非表示/違反報告)
な - 続き待ってます (2023年2月13日 19時) (レス) @page4 id: e8039f9ffd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:TSUBASA | 作者ホームページ:http://exiledaisuki0113
作成日時:2023年1月21日 18時