青道の貴公子

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東「(なんや………何が来る………？)」
東も沢村の時の様な油断はない。だが――これは明らかにおかしい。
　
　
そして放たれたボールは
　
東「捉え！？」
　
東の視界から消え、東のスイングは空を切り、
　
御幸「ぐっ！？」
御幸のミットからこぼれ、彼が後ろに逸らしたのだ。彼が逸らすところを見たことのなかった選手たちはいっせいに動きを止め、その光景を目の当たりにする。
　
「おい………御幸が後ろに逸らしたぞ………」
　
「なんだ、あれは…………」
　
沢村「今、ボールが沈んだ……？何だよ、今の球？」
沢村はその名を知らない。いや、変化球すら知らないのだろう。

友沢「奏太の決め球。魔球SFF(スプリット・フィンガー・ファーストボール)だ」

東を三振に取ったことに今は一様に驚いていた。しかし、それはその前に投げた沢村が彼を三振に取っているので、それも解らなくもない。
　
だが、あの御幸一也が後ろに逸らしたという事実が、グラウンドの空気を凍らせた。
　
新田「俺の勝ちですね。東先輩」

東「このクソガキ。俺の負けや」
　
沢村「………………すげぇぇ………何だよ今の球。フォークなのか？」
沢村が感嘆の声を上げる。
　
高瀬「まあフォーク系の落ちるボールだよ。通常のSFFは落差が小さく、打ち取るためのボール。奏太のSFFは、フォークと同等の落差だよ。
てか、さっき亮も説明してたよね！？」
　
しかも、歩幅が以前よりも小さく、リリースポイントが高い為、より角度がつくSFFはそれだけ落差もでかくなる。
　
御幸「初見であれは厳しいかぁ〜。けど、次は止めてやるよ」
御幸もすぐに気分を切り替え、新田の変化球を称賛しつつ、捕手としてのプライドを口にする。
　
新田「アイツよりも結構キャッチング上手ですし
早くとってくれるの楽しみにしてます」

御幸「あぁ」

新田「それに、スライダー投げたかったんですけど」

御幸「え？アハハハ。確かお前のスライダーって伝家の宝刀だったけ？」

新田「ご存知でしたか」

御幸「当たり前だよ。確かに見たかったけどそれは、
今度だ。どうしても魔球と言われてたSFFをみたかったんだよ」

新田「そうですか」

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