風の秘め事 ページ47
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阿呆くせぇ奴だった。
それでいて何に対してもひたむきで、誰かの幸せの為に自分の命すら捧げるような奴だった。
それが、生まれ変わってもそのまんま変わらなかったことに俺は心の底から安堵していた。
ずっとずっと傍にいてくれたあいつが、あいつのままでいてくれたことがただ純粋に嬉しかった。
けど、その代償なのか。
あいつは何もかも忘れていやがった。
俺達と馬鹿騒ぎしてたことや、本当に平凡で穏やかな日々を。
そしてそのささやかな幸せを脅かす鬼という存在を。
あいつの最期は、柱として恥のないものだった。最後まで刀を放さず、見ず知らずの人間を自分の命と引き換えに守り抜いた。
あいつが死んでから、俺はどこか無気力さを抱いていたんだと思う。俺の心を形作る最後のピースが失くなってしまったような、そんな感覚。
俺がAに抱く想いは、もしかしたら世間一般では“恋愛感情”と呼ばれるものなのかもしれない。
ただただ、大切で大切で仕方がない存在なのかもしれない。
それでも、ひとつ言えるのは。
あいつには誰よりも幸せになって貰いたいということ。前世で誰かの為に、短い人生を捧げて自分の幸せを省みなかったあいつに世界一幸せになって欲しいと思ってる。
これはきっと、冨岡や伊黒も同じ思いだ。
「三人共、折角同じ歳なんだからもっと仲良くしようよ。」
それがAの口癖だった。
そしてあいつの密かな願いだった。
だから、俺達は。生まれ変わった平穏な世界でこうやってずっとあいつらと一緒にいたんだ。
最初はAの願いを叶えてやりたいが故に一緒にいただけだった。
でも、一緒にいてわかった。冨岡や伊黒がどんな奴で何を抱えているのか。
そして、気づいちまった。こいつらのことを俺は、大切な仲間と認識しちまっているということに。
全部全部Aのおかげだ。仲間というかけがえのない存在に気づけたのはあいつがいたからだ。
本当にお前には一生頭が上がんねぇな。
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aya(プロフ) - ラストに向けた展開に心揺さぶられました! (2021年6月8日 2時) (レス) id: 72cb3c8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
かすたーど - ヤバっ!トリハダたちました…! (2021年5月16日 13時) (レス) id: 328ef4fff0 (このIDを非表示/違反報告)
巴 - 学園祭のお話がすごーく良かったです!高校時代に戻りたくなっちゃった。茶道部だったから不死川さんにお茶点てて差し 上げたいわ〜。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 7c1fbdaf37 (このIDを非表示/違反報告)
くれ - めっちゃ面白いです (2021年1月2日 17時) (レス) id: f26c98ad88 (このIDを非表示/違反報告)
そこら辺の水道水(プロフ) - いやなんかw主人公の実況が好きすぎてw (2020年11月18日 7時) (レス) id: 44bf365a1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月11日 23時