21話 ページ21
「……Aはなんて言っていた?」
あ、貴方も私のことナチュラルに名前呼びするのね。まあ良いけど。
てかお婆さん、早まらないでね?
あの言葉、私が気を利かせた末に発した言葉だから。全然本心じゃないから。
そんな私の思いは届かず、お婆さんは頬に手を当てふふっと微笑んだ。
「取り敢えず義勇ちゃんの全部が好きみたいねぇ。私まで幸せになったわぁ。」
どうしよう、今すぐに大声で誤解を解きたい。
冨岡君はキラキラした瞳でこちらを見てくる。多分私が見てきた中で一番輝いている冨岡君だと思う。
喜んでいる…のか…?
「ふふっ、お幸せにねぇ。」
お婆さんはまたお茶を一口啜るとふわりと微笑んだ。
多分この方若い頃超絶美人だったと思う。(真顔)
.
「お邪魔しました。」
「また来てねぇ。」
それから何とか話を逸らしてここまで耐え抜いた。私の至福の休日を切実に返して欲しい。
お婆さんの経営する駄菓子屋さんから出るとどっと疲れが襲いかかってきた。
はぁ、と深い溜め息がでる。
「冨岡君。」
「(なんだ。)」
お婆さんが見えなくなった途端、突然通常運転の無口に戻ってしまったと冨岡君。
これはもしや無視されているのか…?
……まあ気にしない気にしない。
「冨岡君、お婆さんになんて言ったの。私が彼女って盛大に勘違いされてたけど。」
「……。」
じとっとした目で冨岡君を見ると、冨岡君は眉を下げて困ったような、悲しそうな顔をした。
え、私何か悲しませるようなこと言ったか…?と一人悶々と考えていると冨岡君がようやく口を開いた。
「……嫌、だったか?」
「え?」
「俺と……恋人だと勘違いされるのは嫌だっただろうか…。」
待って、やめて。そんな悲しそうなしょんぼりしたような顔しないで。
やっぱ冨岡君の前世犬だわ。垂れ下がった耳と尻尾が見えるもん。
冨岡君は長い時間を有して(一つ一つの言葉と言葉の間の沈黙が長い為)事情を説明してくれた。
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aya(プロフ) - ラストに向けた展開に心揺さぶられました! (2021年6月8日 2時) (レス) id: 72cb3c8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
かすたーど - ヤバっ!トリハダたちました…! (2021年5月16日 13時) (レス) id: 328ef4fff0 (このIDを非表示/違反報告)
巴 - 学園祭のお話がすごーく良かったです!高校時代に戻りたくなっちゃった。茶道部だったから不死川さんにお茶点てて差し 上げたいわ〜。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 7c1fbdaf37 (このIDを非表示/違反報告)
くれ - めっちゃ面白いです (2021年1月2日 17時) (レス) id: f26c98ad88 (このIDを非表示/違反報告)
そこら辺の水道水(プロフ) - いやなんかw主人公の実況が好きすぎてw (2020年11月18日 7時) (レス) id: 44bf365a1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年7月11日 23時