『Tresor 』～Cinderella★Dream～ (ページ12)

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頑なに俺を拒むAになんで一番になりたくないのか一度だけ聞いた事がある。

女の子なら誰しもたったひとりでいいから、一番に愛されたい願望があると俺は思ってたから。

だから気になって…

納得出来なくて…。

『欲深い人間になりたくないからよ。』

って燻るタバコの紫煙の先を切なそうに目を細めながら見つめそう言った。

『…ごめん。本当に意味わかんねぇや。』

『ふふふ。うん…私もわからない。』

Aはこういうところがある。

はっきり物事を言ってるようで本心は言わない。

見せたがらない。

だからきっと心の底ではソレを望んでるはずだって…

俺がいつかきっとって…

そう思い続けてもう7年くらい経つ…。

だけど…

何度キスをしても、何度抱いても一度もAの心は見えなかった…。

・・・満開の花を咲かせる桜の大木に宿る桜の精にでも惑わされたのか…

俺だってバカじゃないし、今はその時じゃないって言うつもりはなかったのに…。

言ったところでAの返事はわかりきってたから。

Aを意識し出したのはいつだったかなんてわからない。

入社式で目が合った瞬間だったかもしれないし、その後の歓迎会からかもしれない。

ただ今までの自分の周りにはいなかった種類の女が物珍しく感じただけ…かもしれない。

今までの俺だったら面倒くさくて絶対に手を出さなかったであろう類いの女。

だけど今まで出会ったどんな女よりも俺には魅力的で気づけば目で追い…

他の男と楽しそうに話すのを見れば気になるし…

ただもう…手に入れたいと願ってた。

ガキの頃の淡い初恋とは違う…

だけど人を好きになる、恋に堕ちるなんて一瞬でそこにどこが？とか時間の長さとか理屈なんてのは存在しないのかもしれない。

それもAの言う本能なのかもしれない。

自分の第六感がコイツだって一瞬にして察知すると言うか…。

『…ごめん…二宮。』

そう小さく呟いたAはフラれた俺よりも泣きそうな顔をしてた。

『いいんだ…わかってた。』

俺がそう言った事で余計に目が泣きそうに細められた。

わかってて言って…

結果、そんな顔をさせてしまった事に罪悪感が襲ってくる。

『でもさ？お前が俺の事を特別に思ってないにしろ、嫌いではない、むしろ好意的だ…って思ってたのは所詮、俺の自惚れ？』

たった少しの可能性でも…

俺はそこに縋りたかった…。