『Tresor 』～Cinderella★Dream～ (ページ8)

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☆ ページ8

入社式で隣にいた男は、可愛らしい見た目とは裏腹に、社長を見据えたその目には隠された野心みたいなモノがあった。

社長の俺様発言に煽られたのかはわからないけど、こういう高みを目指す男は嫌いではない。

群れの中でトップになりたいと思うのはオスの本能。

そんな男もこの甘やかされたゆとりの時代に存在してたのかと…

それもこの会社には彼以上がいる。

『やっぱりこの会社に入ってよかったわ。楽しめそうよ。』

そもそも最初はたまたま見つけた小さな社長のインタビュー記事から始まった。

社長が嫌々で話す講演会も聞きに行き、仕事には一切妥協をせずに上だけを目指すあの社長に興味を持った。

ただこの会社で総合職につけるほどの資格も実力もなく配属は総務課。

所謂、雑用係。

だけど、実力次第ではどんどん上に行ける。

『野心を持った男が好きなクセに、自分はセカンドでいいなんて…あなたもつくづく変な女ね？』

『あら。類は友を呼ぶのよ？お互い様。それに社長はオスとして好きであって男として好きなはわけじゃないわ。』

噂では女は抱かない。

女に抱かれる男。

それも綺麗どころを取っ替え引っ替え。

そして、絶対に本気にはならない…

自分の人生において異性に依存しない、したくないところもまた共感できた部分もある。

大学からの友人の絵里とは配属されたのは別々の部署だったけど、今日は新入社員歓迎会との事で連れ立ってその会場に向かう。

『私は一番がいい。』

『それはあなたが一番に相応しいから言えるのよ。』

男の庇護欲を誘うような可愛らしい外見と柔らかな雰囲気を持つ絵里には一番がよく似合う。

だけど気が強く、男を立てられない可愛いくはない私には【一番】は似合わない。

まぁ…綺麗だとはよく言われるけど…。

『それに絵里は…一番になれる子よ？』

そう言うと泣きそうに目尻を垂らす。

『Aだって…。』

『私はいいの。人間諦めも肝心よ？期待するより諦めて生きていく方がラクなのよ…。』

ただの逃げ？

ううん…それが私が自分を守る術。

『まだ20代そこそこで、そこまで達観しなくてもいいのに…。』

そうは言うけど、私が本心と弱さ見せたところで救ってくれる人はいない。

『私の事はいいの。それよりも有名ホテルのディナーよ？楽しみましょ？』

絵里は納得がいかなそうな表情で頷いた。