毒花 [ry] #req. ページ35
Setting = 元彼女
(ヒロインが病んでて、救いようがなく、暗い話。悲恋注意です!)
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山奥のお寺、数多の墓石が並ぶこの土地に足を踏み入れる。緩く坂になってる道を上っていくと両親が安らかに眠っている場所に着いた。
去年来た時は息が切れるほどの坂じゃなかったのに、ここ数ヶ月真面に食事をとらなかった私はフラフラと覚束無い足取りだ。
毎年この時期は両親の墓参りをしているから、自分の体調を理由に休む訳にはいかない。
……今日はそれにプラスして、想い人への未練を捨てに足を運んだ。
「父さん、母さん、きたよ」
一年ぶりだね、と声を掛けるとザアと風が吹いた。まるで返事をしているかのように。
挨拶を終え 掃除やお清めをして、花を置く。ラベンダーの良い香りがするお気に入りの線香に火をつけてそっと寝かせると、ふわふわと風に乗って優しい香りが飛んできた。
しゃがみ込んで手を合わせる。
ゆっくりと瞬きするとぽたりと一粒涙が零れた。
「もうね、疲れちゃったんだ」
思ったよりか細い声が出て、喉が震えた。じわりじわりと滲んでくる涙を止めることは出来ない。嗚咽を堪えながら続ける。
「他人の振りして生きるのはね、もう、辛いんだ。亮くんちっとも思い出してくれんし、大学で初めて会ったと思っとる。気付いたら卒業してて、就職もして、YouTubeも始めて 私は置いてけぼり。……先週ね、彼女紹介されてさ…私を、忘れてることすらずーーっと、忘れてるんよ。」
つらつらと話し始める、想い人のこと。
――学生時代のひょんな事故で、私のことだけぽっかりと忘れてしまった亮くん。
運よくなのか、運悪くなのか、わからないがそのタイミングで転校となってしまった私。
付き合っていた頃の、最後の記憶は甘い記憶ではなく……とても苦い、“誰?”と言った無表情な亮くんだった。
「亮くんじゃなきゃ駄目なのに。友達なんて、いやだ、亮くんが居らん世界なんて要らんのに…」
大粒の涙が地面に染みをつくる。
「っ、……父さん、母さん、ごめんね。もうすぐ、そっちに行っちゃうかもしれんけど、温かく迎えて」
弱い私でごめんね、と呟くと一安心した様に力が抜けるのを何とか踏ん張って立ち上がる。
ぐらぐらと頭が重く片付けもままならないが 線香の火が消えるまで見詰めて、煙が途絶えた頃そっと両親の墓を後にした。
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遊馬(プロフ) - ゆさん» 長い間ご愛読頂き有難うございました!ひとつひとつ時間をかけて生み出したお話を気に入って頂けてとても嬉しいです。またお時間ある時に読み返して頂けたら嬉しく思います…!どうぞこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月2日 2時) (レス) id: fccb4604d0 (このIDを非表示/違反報告)
遊馬(プロフ) - 怜さん» 長い間ご愛読頂き有難うございました!初期の方は見返すと小っ恥ずかしい気持ちになりますが、どのお話も気に入って頂けて作者冥利に尽きます…。これからもどうぞ作品共々よろしくお願いします! (2020年2月2日 2時) (レス) id: fccb4604d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - 完結お疲れ様でした!どの話もとても楽しく読ませて頂きました、、!終わってしまうのはとても悲しいですが、さらにまた読み返そうと思います!新作がもし出来たらすぐに読みに行きます!! (2020年1月31日 21時) (レス) id: 2e60baebd0 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 完結おめでとうございます!どのお話もとっても好きで、3作ともたまに読み返しています…他の作品の更新も頑張ってください〜! (2020年1月31日 21時) (レス) id: 291ffdfed4 (このIDを非表示/違反報告)
Flower 328(プロフ) - リクエストありがとうございました♪甘々で溶けました…… (2019年12月6日 9時) (レス) id: 34909526e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊馬 | 作成日時:2019年7月5日 23時