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「…ふーん」
そんな筋合いはないけど、ショックだった。
まるくんが女の子をとっかえひっかえして遊んでたのは知ってる。その時は微塵も心は動かなかった。
…だって、その女の子より私との飲み会を優先してくれるから。私を大事にしてくれてるのが分かってたから。
優先順位…なんて言ったらよくないけど、私の中で親友であるまるくんはトップで。まるくんのトップも私だと思ってた。
これからも揺るがないものだと。
「――A?酔った?」
覗き込むように視線を合わせるまるくんに心臓が音を立てたのがわかる。
酔いはとうに醒めていた。
…なんでこんな時に自覚するんだろう。
“まるくんが好き”だってこと。
「っ、あ ごめん。ちょっとトイレ」
そそくさと逃げる私は臆病だ。
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手を洗って、出ようかと思いつつ躊躇して。また手を洗う。やけに冷たい水が私の甘さを流してくれる気がした。
そんな馬鹿なことを考えてる私は指先が冷え切ってることに気付けない。
席に戻ると会計を済ませたまるくんが立ってた。
「えっ?払っちゃった?」
「うん〜」
「払うよ!いくらやった?」
「今日はいいよ。またこよ。」
さらっと手を掴まれると二人とも吃驚した表情で固まった。
「手つめた!冷えたんじゃない?顔色悪いし早く帰ろ」
「ちょ、ちょっと…!」
まるくんは私の話を聞かず ごちそうさまです〜と挨拶をして居酒屋の外に出る。その瞬間、熱帯夜独特のむわっとした空気に襲われた。
「あっつ…」
「……まるくん、手」
「……もうちょっとだけ」
ぎゅっと握られた手に熱を感じて、視線を上げると真面目な顔してまるくんがこっちを見てた。
いつになく、真剣な表情。
甘い空気に息も止まりそう。
「ねぇ、A」
たった一回だけ、この甘い声で呼ばれた時のことを思い出す。
あれは確か――
「まだ俺 Aが好きなんだけど、」
――心の奥深くに閉じ込めてた、中学の卒業式の淡い記憶。
ゆっくりと動きはじめる、私たちの関係。
___ / end
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リクエスト有難うございました!
友情と恋が分からなくなってる関係がもどかしくて好きです(笑)
フラワー - 登録増加おめでとうございます。遊馬さんのストーリー好きなので安心して読んでられます。リクエストですがゆめまるの話をお願いしたいです。投稿頑張って下さい♪
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遊馬(プロフ) - ゆさん» 長い間ご愛読頂き有難うございました!ひとつひとつ時間をかけて生み出したお話を気に入って頂けてとても嬉しいです。またお時間ある時に読み返して頂けたら嬉しく思います…!どうぞこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月2日 2時) (レス) id: fccb4604d0 (このIDを非表示/違反報告)
遊馬(プロフ) - 怜さん» 長い間ご愛読頂き有難うございました!初期の方は見返すと小っ恥ずかしい気持ちになりますが、どのお話も気に入って頂けて作者冥利に尽きます…。これからもどうぞ作品共々よろしくお願いします! (2020年2月2日 2時) (レス) id: fccb4604d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - 完結お疲れ様でした!どの話もとても楽しく読ませて頂きました、、!終わってしまうのはとても悲しいですが、さらにまた読み返そうと思います!新作がもし出来たらすぐに読みに行きます!! (2020年1月31日 21時) (レス) id: 2e60baebd0 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 完結おめでとうございます!どのお話もとっても好きで、3作ともたまに読み返しています…他の作品の更新も頑張ってください〜! (2020年1月31日 21時) (レス) id: 291ffdfed4 (このIDを非表示/違反報告)
Flower 328(プロフ) - リクエストありがとうございました♪甘々で溶けました…… (2019年12月6日 9時) (レス) id: 34909526e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊馬 | 作成日時:2019年7月5日 23時