涙の理由 ページ10
やってしまった、と思った。久々の感覚にぐっと目頭を抑えるも、目の奥から伝う雫は容赦なく目を潤ませた。痛い、とてつもなく。久々だったから尚更そう感じるのだろう。さらに深く目頭を抑えると、その衝撃で遂に1人からぽろりと一粒こぼれてしまった。
泣いたのなんていつぶりだろうか。頬に伝う液体の感覚を見てどこか他人事のように感じ、必死に痛みに耐える。一向に引かない痛みにひとつ舌打ちを落とした。
ここにいてはダメだ、とその場から離れ、リビングのソファに腰掛けて俯く。とまれ、とまれと心の中で叫びながら、ぐっと目頭を抑えた。
然しながら神様とは意地悪なもので、こういう時に限って誰かやってきてしまうのだ。
「A、ちょっと、」
「と、しみ」
つ、そう言って顔を上げると、目の前の緑色が良く似合う彼はまん丸と目を開く。なんか満月みたいだなあなんて場違いなことを考えつつ、必死に次々零れる涙を拭った。
「は、？なんで泣いとるん、なんかあったか？」
「や、ちがくって、久々で、痛くて…」
「久々でいたい？…待ってろ、虫さん呼んでくるだら、まっとれ」
少し動揺しつつも優しく頭を撫でてくれるとしみつは、何を思ったのか自分の幼馴染を呼んでくると言ってソファから離れ、大声で「虫ー！！！金澤ー！！！」と叫びながらリビングをあとにしてしまった。そんな大声で叫ばないでもいいじゃないかと思うが、取り敢えず自分は痛みに負けぬように零れる涙をぐっと抑える。
次にやってきたのは焦り顔のざわと、ざわと共にいたのであろうと推測できるてつやがやってきた。事態がややこしくなりそうな感じがしてくらりと目眩がするも、もう既に両隣、さらに前の前にとしみつという状況が作り上げられて逃げることが出来なくなってしまった。
迷惑かけたくないのにな、そう思い俯くと、強い力で顔を挙げさせられる。
目の前にはメガネを外したざわの顔がドアップで、一瞬驚いた。
「A」
「ん、はい」
涙が出ていたせいが若干鼻声な自分に少し笑いが漏れる。
「何があったん？」
「なんもなくて、」
「嘘、君がこうなってる時はだいたい何かあるんじゃん。話してみん？」
真剣な瞳にコクリと生唾を飲む。
反対側のてつやに頭をそっと撫でられ、正面のとしみつに手を握られ、ざわに顔を固定されている。
玉ねぎ切ってたら久々に目に染みてしまいました、なんて言える雰囲気ではないことをそっと察した。
ーーー
過保護オンエア
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 209人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「紅一点」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Sfela-すふぇら-(プロフ) - mai?あまっちさん» リクエストありがとうございます！お時間頂きますが必ず更新致しますので少々お待ちください〜！暖かいおっ言葉ありがとうございます！ (2018年8月7日 17時) (
レス) id: b5335ed803 (このIDを非表示/違反報告)
mai?あまっち(プロフ) - はじめまして！いつも見ています！！あの…リクなんですけど…YouTuber理解王のやつが読みたいですプリッとChannelも好きなので…遅くなってもいいのでお願いしますm(__)m (2018年8月4日 11時) (レス) id: fec9aded6d (このIDを非表示/違反報告)
: - 更新嬉しいです！頑張ってください* (2018年7月11日 0時) (レス) id: 2561c8f55b (このIDを非表示/違反報告)
Sfela-すふぇら-(プロフ) - ＊じゃっきー＊さん» 大変嬉しいお言葉ありがとうございます！ありがとうございます、今後も紫陽花の君を宜しくお願い致します…！ (2018年5月27日 14時) (レス) id: 29f5b6d481 (このIDを非表示/違反報告)
＊じゃっきー＊(プロフ) - 初めまして、いつも拝見させて頂いています。こんな素敵な作品を公開して下さって本当にありがとうございます！更新の無い日も通って遡って楽しんでおります。どうか無理をなさらず、楽しく更新して下さることを願っています。これからも応援しています！ (2018年5月26日 18時) (レス) id: 57c4a7bd3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Sfela-すふぇら- | 作成日時：2018年5月16日 1時
