検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:32,724 hit

第102話 逃げ出したい現実 ページ9

.

小笠原さんのいない生活から数日経った頃。私は、疲弊していた。

毎日の授業について行くのがやっとで。毎日、寮と学校、図書館の往復。

佑亮くんに分からないことを聞かれても、私は上手く答えることができなかった。



少し遅くなった夕方時の廊下。

「顕著に現れてるよなー。
お前、あの執事と本当はデキてたとか?授業中に答えとか教わってたんだろ」

私の前に現れたのは、ちょくちょく見かける男子生徒。クラスが違うから名前なんて知らないけど、カンニング疑惑の時も写真の時も…この人の声が一番大きく聞こえたような気がする。

「…」

私は、そんな男子生徒の隣をすり抜けようとした。

「カンニングしたって、とっとと認めれば?
それに、いつも思うけど、お前の周りにいる奴らって不幸になってるよな」

−不幸

どくん、と大きく心臓が脈打つ。

不幸。

…両親の死。
誘拐未遂事件被害者の佑亮くん。
会社倒産の危機を迎える草川さん。
呼び戻された小笠原さん。

「あの執事、オガサワラ…だっけ?
ここの学院の卒業生で、成績は常にトップだったとか。
…そんな奴に勉強の答えを教えてもらってたら、上位成績キープできるはずだよなあ!」

男子生徒の声が、大きく反響する。声を聞きつけた何人かの男子生徒たちが、私と彼をちらちら見ていた。

「うっわ…。やっぱりあいつが…」
「テスト中は執事の連れ込みできないからな…」
「カンニングとか…。まじありえねーえわ…」

私を罵倒する声だけが、廊下に響く。

「俺は、カンニングなんか…!」

私が声を荒げた時、男子生徒の口角が上がった。

「じゃあ、実力で勝負できるってことだよな?」

…分からない。今の私じゃ…。

「できないの?なら、ここでカンニングだったって認める?」

ばくばくと、心臓を打つ速度が上がる。

私はカンニングなんかしていない。でも、実力で勝負することもできない。
ここで失敗したら…小笠原さんの顔に泥を塗る羽目になる。

どうしたら良いか分からなくて。どう答えたら良いか分からなくて。

私は逃げ出すことしかできなかった。

第103話 本当は怖くて寒い→←第101話 拭いきれない不安



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (56 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
179人がお気に入り
設定タグ:超特急 , 男装
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx  
作成日時:2018年5月29日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。