第9話 嘘つきは何とやら ページ9
.
「ふっ」
私の背後から聞こえてきた小さな笑い声。私含めた全員が、笑い声が聞こえた方に目を向けた。
「…何がおもろいん?小笠原サン」
制服のポケットに手を突っ込んで小笠原さんを睨むように見る吉野晃一。
「いえ。失礼いたしました。
ただ…私はすごい人にお仕えしているんだ、と思うと嬉しくて」
小笠原さんはちょっと上機嫌に言葉を返すと、静かに目を伏せた。
その瞬間、始業のチャイムがタイミング良く鳴り響く。
「次は、韓国語の授業でございますね」
小笠原さんの声が弾んでいるように聞こえる。私はこくりと頷くと、小笠原さんが教科書の用意をしている光景を眺めていた。
*
全ての授業が終わり、私はぐーんと伸びをした。
あー疲れた。早く部屋に戻って休もう。
私は教科書をしまおうと手を伸ばす。そして、それを別の手で遮られた。
「A様。荷物は全て私がお持ちいたしますね」
「あっ、…お願いします」
宙に浮いた手を誤魔化すように、私は後ろ髪をぽりぽり掻く。
ふと顔を前に向ければ、また船津稜雅と目が合った。
「…」
小さく息を吐くと、静かに立ち上がった船津稜雅。
「準備が整いましたよ、A様」
「あっ、はい!」
私は特に気にも留めず、慌ててその場から立ち上がった。
*
「あー!もう疲れたー!」
ぼふん!とベッドに背中から飛び込み、ローファーをその場に脱ぎ捨てる。綺麗に掃除された床の上に、ゴンッと音を立てて落ちる私のローファー。
私はベッドの横にあるサイドテーブルから、お気に入りの漫画を取り出した。
「A様。スリッパを着用させていただきますね」
「うーん…」
ベッドの上で漫画を読んでいる私の脚を触る小笠原さん。漫画に夢中だった私は、小笠原さんがどんな目を向けていたのか気が付かなかった。
「…A様。なぜ、女性であるあなたがルミエール学院に?」
漫画から目を離し、がばっと起き上がる。そして、視線は小笠原さんの方へ。
「な、何を…」
「ふふっ。口を割らないおつもりですか?」
目を見開いて驚く私を差し置いて、小笠原さんはただ不敵な笑みを見せる。そして静かに立ち上がると、起き上がった私の体を押し倒して、私の首にかかっているネクタイをしゅるりとほどいた。
「1つだけ言えるのは…私の楽しみが増える、ということですね」
これは、まずい。
154人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2017年12月24日 17時