第45話 近距離に高鳴る胸 ページ45
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ー誘拐未遂事件から3日後
「Aくん、これって何?」
「あー、これはね…」
静かな部屋で、肩を寄せ合う佑亮くんと私。そして、私の背後には、ぴったりとくっつく小笠原さんの姿がある。
外出禁止令を出された佑亮くんは、授業が終わった後まっすぐ寮へ帰らなければならない。ただし、ずっと1人は不安だろうということで、勉強会という名目で佑亮くんの部屋に来ている。
「…正解です、A様」
腰を曲げ、私の耳元で囁く小笠原さんの声。
「あ、ありがとうございます…」
この間の件があり、小笠原さんとの距離に思わず顔が赤くなる。ばくばくと鳴る心音が2人に聞こえていないか心配になった。
「わ…オレ、ちょっと洗面所を借ります」
静かに席を立ち上がり、洗面所のある扉を開ける。ぱたん、と背後で閉ざされた扉。静まり返る個室に私の心音が響いた気がした。
「(て、言うか!小笠原さんはちょっと距離が近い…)」
ー…気を抜いたら、好きになっちゃいそう
「(だめだめ!私の目的は援助者探しなんだから!執事に惚れてる場合じゃない!)」
両頰をぺちぺちと叩き、天井を見てガッツポーズ!
私は洗面所の蛇口をひねり、気合を入れ直すために顔を洗った。
ドアを開ければ、目の前にはぐったりした顔の佑亮くんが立っていた。
「お、小笠原さんって…結構スパルタなんだね…」
ふと蘇るスパルタ授業の日。
ぎぎぎっと音が鳴るくらい小笠原さんの方を見れば、変わらぬ笑顔でそこに立っている。
「A様。早くこちらへ」
今度は、違う意味で胸が高鳴った。
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2017年12月24日 17時