第38話 奪われたものとは ページ38
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どん、と聞こえた小さな物音。小笠原海は聞き逃すことなく、物音が聞こえた方へ足を向けた。
「…福田様?」
ぼろぼろの引き戸を開ければ、朽ちた床に背中を向けて寝かせられている福田佑亮の姿。まるで芋虫のように、両手と両足を前にロープで縛られている。
「探しましたよ、福田様」
そう言いながら体を抱え起すと、そこにいたのは福田佑亮本人ではなく福田佑亮の制服を着たマネキンだった。
驚いた小笠原海の隙をついて、背後に現れた誰か。小笠原海が気が付くより先に、後ろから木の棒のようなもので攻撃された。
*
「…何で、あの人にあんなことを言ったんだよ」
私に疑問をぶつけたのは、窓の外を見ている草川拓弥だった。
「あんなこと、って?」
質問返しをした私。草川拓弥は、ゆっくりと返答する。
「佑亮の気持ちはどうなるんですか、って聞いたことだよ」
どことなく、草川拓弥の瞳に影が出る。
「期待に答えるのは当然のことだろ?そこに、気持ちも何も関係あるかよ」
「たしかに、期待に答えるのは重要ですけど…。自分の気持ちを考えるのも大切なことですよ」
私の返答に納得いかなかったのか、草川拓弥は興味なさげな顔を浮かべてまた窓の外へ目を向けた。
期待だけに答え続けるなんて、絶対に窮屈だと思う。それで当人が納得しているなら良いけど…ちゃんと自分の気持ちも考えなくちゃ。
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2017年12月24日 17時