第37話 佑亮くんの気持ち ページ37
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「ケガ人もいるじゃないか…!
この学校は、一体どういう教育をしているんだ!」
佑亮くんのお祖父ちゃんは、私の顔を見ながらさっきよりも声を張り上げる。
「こんな危険な場所に、大事な跡取りは置いておけん!
佑亮が見つかり次第、すぐに引き渡せ!」
「あの!!!」
教室を出ようとする佑亮くんのお祖父ちゃんの背中に、思わず声をかけてしまった。椅子から立ち上がっている私の方をゆっくりと振り返る佑亮のお祖父ちゃん。
「何だ?」
続きを促すように、お祖父ちゃんは言葉を返す。
「…佑亮くんの気持ちは、どうなるんですか?」
そう聞いた私に、お祖父ちゃんはハッと鼻で笑った。
「佑亮の気持ち、だと?」
「佑亮くんの意見も聞かず、連れ去るような真似は良くないと思います」
はっきり答えた私の前に、ゆっくり歩み寄るお祖父さん。
「いいか、小僧。よく聞け。
佑亮のことは、ワシが一番よく分かっている。佑亮だって、こんな危険な学校に居たくないはずだ」
「それは、まだ佑亮君の意見じゃないです」
何となく、このお祖父ちゃんの一部が見えたような気がする。
間髪入れず言い放った私の返答に、今度は呆れ顔を見せたお祖父ちゃん。
「本人が言わなくても、ワシには分かる。家族だからな。
家族でもない−−同級生だけのお前に、佑亮の何が分かる?」
お祖父ちゃんはそう言い残すと、教室を後にする。私は、開いた口が塞がらなかった。
あのお祖父ちゃんは、佑亮くんのことを何も考えていない。なぜ佑亮くんが会社を継ぎたくないのか、その理由が見えた気がする。
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2017年12月24日 17時