最重要機密事項！ (ページ33)

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第33話当人が決めることページ33

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「…珍しいですね。
A様が、不得意な法学を勉強なさるなんて」

私の肩越しから、六法全書を覗き込む小笠原さん。

「うーん。…不得意なことも伸ばさないとな、と思って」

でも、正直分からない。何これ、暗記問題だとしてもハードル高すぎ

ペンを置く私を見て、小笠原さんは小さく微笑む。
そっと置かれるティーカップから、ほんのりと漂うローズティーの香りに癒される私。

一息入れようと、ティーカップを手に取る。

「…－－跡取り、という単語に法的拘束力はありませんよ。全ては、当人が決めることです」

紅茶の水面に揺れる小笠原さんの顔。どきり、と心臓が飛び上がった。

「な、何、突然。別に、そんなんじゃないですよ」

誤魔化すように、私はローズティーを口に運ぶ。

「(当人が決めること、か…)」

思えば、私がここへ来たのは自分の意思。全ては私が選んで決めた道。

「選択する権利は、当人のみが行使できます。
A様のように違う道へ進むも良し、そして逃げ道へ進むのも良い選択の1つと言えますね」

私の場合、逃げるという選択肢はあったのだろうか。

肘をつきながら、パラパラっと六法全書をめくる。

「…あっ」

その時、1つの項目－－会社法に意識が向いた。

「…逃げ道は、自分で考えて作るしかないですもんね」

私のセリフに、笑みを浮かべる小笠原さん。存外、逃げ道はちゃんとあるんだ、と学ぶことが出来た。