最重要機密事項！ (ページ32)

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第32話罰と罪の過去たちページ32

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「…海」

静かな廊下に響く低い声。荷物を持っていた小笠原海は、ゆっくりと声の聞こえた方へ振り返る。

「どうかされましたか？－－船津様」

名前を呼んだのは、ぶどうの皮のような濃い紫色のネクタイを身に付けている船津稜雅だった。
小笠原海は、いつものように口元に笑みを浮かべながら船津稜雅を見据える。

「…なんで、あいつの専属執事になったんだ？」
「ふふふっ、さあ。私の気まぐれでございます」

静かに問う船津稜雅と、それをはぐらかす小笠原海。

「では、雑務がありますので」

小笠原海は胸元に手を当てると、丁寧にお辞儀を返す。そして、船津稜雅に背を向けて廊下の奥に足を進めた。

＊

「僕が次期社長になる未来は、株主総会で決まったことだから覆すことができない。
この学校に入れられたのも、経営者としての知識や技術を学ぶため。

…でも、僕は、ただ普通の生活がしたい。公立中学校を卒業したら、建築学科の高校に通って家族のために家を建てる…なんて夢も持ってた」

佑亮くんの目からポタポタと大粒の涙が溢れ出す。

「お父さんは、最後まで…嫌がる僕の味方でいてくれた。それなのに…もう、僕の味方がいなくなっちゃった」

佑亮くんの顔が歪む。ポタポタと私の目から涙がこぼれ落ちた。

「言われたんだよ、お祖父ちゃんに。お前に会社を継ぐ決心がないから、お父さんは－－って。

…お父さんの死に目にも立ち会えなかった。…本当に、悔しい…っ」

そう言いながら、佑亮くんはしゃがみこむ。そして、声を抑えて泣いていた。

「もう、ここで頑張る理由が無くなったよ…」

最後にそう呟いて。