最重要機密事項！ (ページ20)

今日:29 hit、昨日:1 hit、合計:68,702 hit

第20話バルコニーに村田ページ20

.

陽の光が入り込む、あたたかい教室。
一夜漬けした翌日、私のクラスでは小テストがあった。

「(はー、あったまいったい…)」

こめかみをぐりぐりと揉みしだきながら、サイドテーブルに肘をついた。

「Aくん、テストどうだった？」

ぼーっとしてる私の席に来たのは、にこにこと笑顔を振りまいている佑亮くん。私はサイドテーブルから肘を離し、姿勢を正す。

「全然ダメだった、なんてことはありませんよねA様」

きらきらとした笑顔を向ける佑亮と、黒々しい笑顔を向ける小笠原さん。冷や汗しか出ない。

「まぁ…その…えっと…ちょっと俺、外の空気吸ってくる！あ、1人で行きますから！」

席から立ち上がり、すたすたと教室を出る。とても広い廊下ですれ違う教師や学院生に頭を下げて、一番広いバルコニーに訪れる。そこには、すでに先客ー村田祐基がぼんやりとした顔で立っていた。

こげ茶の髪の毛に、綺麗な横顔。物思いに耽る村田祐基は、女の自分が嫉妬するほど美しいと思える。

「…何、何か用？」

私は村田祐基をじっと見すぎていたのか、不審そうな目を向けられた。

「あ…いや…」

私は村田祐基から目を離し、バルコニーの端に足を運ぶ。
前を見れば、広大な花畑と噴水、マルシェ、そしてチャペルが見えた。

「わあ！綺麗…！」

目の前にある景観に思わず声を上げる。慌てて手で口元を抑え、少し先にいる村田祐基を盗み見た。

ただ目の前をぼーっと眺めている村田祐基。どうやら聞こえてなかったらしい。そっと胸を撫で下ろす。

「…A様、授業が始まります。教室へお戻りください」
「あ、は…はい」

小笠原さんの元へ足を進める。ちらりと後ろを振り返れば、まだ景色を眺めている村田祐基。

「村田…さんも、教室に戻りましょう」

村田祐基は小さく息を吐くと、すたすたとバルコニーを出る。私たちも、その後を追った。