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21 *きゅうじつ9 ページ26

(山宮)

「…じゃあ、帰ろうかな。用も済んだことだし」


くるりと向きを変えて玄関へ向かおうとする。

「今日は本当にあ────「A」

びくり。


山さんに名前を呼ばれただけなのに少し驚いた様子で、立ち止まってしまう。

「な、に。山さん」

「Aってさ」


山さんの低い声が、背中にあたる。

その声がこそばゆくて、思わず声を出しそうになる。

「可愛いよね」

え────。


それは、どういう意味で言ってるの。



私の頭の中が、疑問符で埋めつくされて行く。

「ありがとう…。ね、それどういう意味で」


「好きって意味」

私も、好き。


けど、山さんの言ってる好きは、私の好きとはたぶん違う。

そう考えると、きゅうっと胸が締め付けられる。


「ありが、とう。これからも、よろしく」

最後の方は声が震えて、言葉になっていなかったと思う。

これ以上この場にいたら大泣きしそうだから靴を履いて外に出ようとする。


が。

「ねぇ、待って」

山さんの骨ばってて大きい手が、私の腕を掴む。私は、抵抗なんて出来ず、その場で立ちどまる。

「いい加減気づいてくれない?」

その、言葉の意味は────。

「俺さ、さっきから好きって言ってるんだけど。Aのことが好きって言ってるんだけど。


──────付き合ってほしいって言ってるんだけど」


うそ

でしょ。

そう思った。



けど、嘘じゃないみたい。

“ぽろぽろ、ぽろ“

頬を涙が伝う。


ご存知の通り、嬉し涙だ。


「それ、ほんと?」


「うん。本当」


身体が、自然と動く。

気づくと私の腕は山さんの身体を抱いていた。


抱きしめてるって、ハグしてるって、気づいてるけど、そんなの気にするもんか。

きつく、きつく、抱きしめる。


山さんも、私の体を抱きしめてる。




山さんの温もりを、ひとの暖かさを、感じられた。

とても、心地よかった────。

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作者名:Blueheart | 作成日時:2017年12月27日 12時

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