逃げたら捕まえる ページ15
***
「芥川君、食べないの?」
「その…」
そういえば食べ物とはどんな見た目だっただろうか。芥川はもはやそれすら思い浮かばなくなっていた。
変な匂いが部屋を包み込む。目眩を引き起こしそうなそれは明らかに人が食べても大丈夫なものではない。
「太宰さん、やつがれ…これは食べれませ」
「ん?何だって?もう一度言ってみて」
いえ、なんでもありません。
そう言い切った芥川は心理戦で食べるのを回避するのではなく、普通に逃げ出したほうが良いのではと考えた。
しかし玄関は自分の後ろにあり、此処から立って行くのにはいささかの無理がある。途中で太宰に捕まってしまっては意味がない。
___逃げるか。
一か八か、そう決めた芥川は少し体勢をずらす。太宰はもう料理を食べてしまい、得体の知れない事を言っている。
そして芥川が立ち玄関まで走った時、急に扉が勢いよく開いた。
「太宰ィ!!貴様職務を置き去りに何をしているッ!」
「なっ!」
そして運悪くも叫んだ国木田とすれちがって転びそうになる芥川は目の前の白い何かに抱き止められた。
「あーれー?くーにーきーだーくんじゃぁなーいーかー」
のろのろと焦点の合ってない目をちろちろとさせながら何処かのホラー映画のように太宰が近づいてくる。というのも国木田の鉄槌で太宰は正気を取り戻した。
「国木田君…?何故いるんだい?私は今芥川君と」
「クソ太宰!何だあの物体は!まさか料理とは言うまいな!」
「芥川君と晩餐を楽しんでいたのに…」
「違います国木田さん!芥川が物凄い勢いで首を振ってるので違います!」
もはや混沌の世界となった太宰の自宅。キノコ料理はとっくに冷めてしまっている。
そして国木田は太宰を締め上げている。
「大丈夫…?貴方、この前より痩せてる」
「けほっ、久しいな鏡花。痩せてなど…」
「それに縮んだ」
「それはあり得ぬ!」
ほほえましい会話も同じ空間で行われていた。しかし敦は芥川の首根っこを容易くつかみこう言った。
「……痩せたな。あと縮んだ」
「貴様まで!」
「お前172糎とか言ってるけど、靴はいた状態での大きさだろ。体重も外套が無ければ40キロ代か……」
僕はちゃんと裸足で身長測ったよ、あと体重は朝に。
そう言う敦を刺したいが、芥川は異能が使えないのでただただ痩せた、縮んだと言われるばかりだった。
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