sacrifice〜15 ページ19
次の夜明け前、カヲルくんは私を外に連れ出した。
ぐっすり眠っている娘を置いて、薄暗く橙がかった空の下を歩いた。
着いた先は、真赤な海を一望できる場所。
側には手すりのないボロボロの階段があって、下に下にと伸びている。
下からの冷たい風が肌に冷たく吹きつける。
「ねえ、どうしてこんなところに」
「いいから」
あまりの寒さに私は自分のコートの裾をぎゅっと握りしめた。
随分とカヲルくんは代謝がいいようだ。
私よりかなり薄着で側に立っている。
「この場所に人を連れてくるのは、君が初めてだよ。僕のお気に入りの場所でね。見てて」
腕時計の秒針が進んでいく。
風の音だけが耳をくすぐり、冷たい風で鳥肌がたつ。
次第に白んでいく空。
ひょこり、と太陽の光が水平線から顔を出した。
沈黙。
その分だけ、太陽は登っていく。
息を飲んだ。
「君に見せたかったんだ。これを」
カヲルくんはそう言ってこちらを見た。
「綺麗…」
赤い海に輝く光。
エネルギー。
昔は、今はいない海の生き物に、この光は一日の活力を与えていたのか。
そしてそれと同じように今、この時、私に活力を与えてくれているのか。
この一瞬、一秒が永く感じて、愛おしかった。
ずっと二人で、いや、三人で見ていたいと思った。
「もっと、もっと…生きたい。」
ポケットの中の薬が、重く感じる。
胸の手術痕が痛む。
「もっと、ずっと、側にいたい…」
自分の目が潤んでいくのがわかった。
そしてずっと抑えていた何かが、涙を誘っているような。
「どうして…私たちって、いつもいろいろな壁にぶつかるのかしら」
涙でくしゃくしゃになった顔で、カヲルくんを見た。
すると彼は優しく微笑んで、私を抱きしめた。
「相変わらずの泣き虫だ」
「そんなこと」
私は顔を上げた。
「この時間は、魔法じゃない。それから君と僕がいたことも、幻なんかにはならない。こうやって今、二人で息をしてるじゃないか」
「息、を…」
呼吸を整える。
深く、深く、深呼吸。
「そう、だね。息してるんですもの。あなたの隣で。」
私はそっと愛しい人の頬に手を当てる。
「私、幸せ者だ。」
そう言って笑みをこぼす。
カヲルくんは何も言わずに私の唇にキスをした。
長いキスを何度も求めた。
私はそれに応える。
彼の心情は、私にはいつも読めない。
でも、その時は理解できた。
『離れたくない』
彼が思っているのは、ただ、それだけだと。
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茉莉 - めっちゃ最高です！更新楽しみです！頑張ってください((๑•̀ㅂ•́)وｶﾞﾝﾊﾊﾞﾚ~!!! (7月30日 19時) (
レス) id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
kaori - 続きがテニスの王子様めっちゃ気になります！ (6月22日 19時) (レス) id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
kaori - 読みました！ (6月22日 19時) (レス) @page36 id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
かずほ(プロフ) - 初めまして！昨日、シンエヴァ見に行って再び エヴァ 火付いてしまいましたw カヲルくんのとこ泣きました！ こちらの夢小説シリーズ読ませて頂きました！更新楽しみにしてます！ (2021年3月19日 19時) (レス) id: 4ea2670edc (このIDを非表示/違反報告)
RUKA(プロフ) - 長々とコメントを書いてしまい、ごめんなさい。続きがとても気になります。更新頑張ってください。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 4977de0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅坂紅子 | 作成日時：2016年2月14日 1時
