sacrifice〜12 ページ16
何かと大急ぎだったからか、移動はヘリだっった。
自分の身と娘を命綱ににかけ、ゆっくりと地上に降りていく。
当然、人気はない。
危険察知アラームも、ヘリのプロペラが回る轟音にすら、反応しない。
六年前、ここに降り立った時と何も変わっていなかった。
ピアノの位置も、彼の部屋への経路も、倒れかけた自販機の角度も、何もかもが変わっていなかった。
迷路のような廊下を、娘の手を引きながら駆け抜ける。
与えられた、三日という時間。
私が長く生きない限り、彼のもとに娘を連れてこられない。
今のうちに少しでも長く、彼の顔を娘の目に焼き付けたかった。
耳を掠めるピアノの音色。
綺麗な旋律の中に時々入ってくる、中途半端なC音、G音。
一人でいるわけじゃないことが、簡単に想像ついた。
きっとそれは碇シンジ…なのだろう。
「ママ、ピアノの音が聞こえる」
「そうね。あともう少しだ」
六年前、此処にきた時には長かった髪も、今では短く切り、ボブにした。
彼の反応はどうだろう。
ワクワクしたりして。
あともう少し。
あともう少しで彼に会える。
駆け抜ける廊下の先、差し込む光。
息も切れ切れ、ピアノのある部屋にたどり着く。
「ママ大丈夫？」
「うん…大丈夫よ」
ピアノの音色が一旦途切れる。
息を整えて顔を上げると、ピアノ椅子に座った碇シンジと、あまりに突然の出来事に驚き、楽譜を落として茫然とするカヲルくんがいた。
「A…、本当にAかい？」
「ええ。」
「隣にいるのは」
「あなたの娘」
キキョウはあっけらかんとしている。
そして私を見て、パパ？と聞いて来た。
「そうよ。ママのだーい好きな、キィのパパ。」
直ぐに顔が晴れやかになった。
「パパのところ行ってもいい？」
「勿論」
「おいで、キキョウ」
父親の胸に飛び込んでいくキィ。
感動の対面を、ずっと側で見ていた。
キィから離れると、次は私をしっかりと抱きしめる。
不覚にも、涙が出て来た。
「ごめん…なさい」
「謝ることはないさ。
一人でこの子を此処まで育て上げてくれた。よく頑張った」
優しく頭を撫でてくれたその細い指の感覚は、昔とさっぱり変わっていなかった。
いつまでも、いつまでもその優しさに触れていたい。
溺れてしまいたい。
切にそう願った。
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茉莉 - めっちゃ最高です！更新楽しみです！頑張ってください((๑•̀ㅂ•́)وｶﾞﾝﾊﾊﾞﾚ~!!! (7月30日 19時) (
レス) id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
kaori - 続きがテニスの王子様めっちゃ気になります！ (6月22日 19時) (レス) id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
kaori - 読みました！ (6月22日 19時) (レス) @page36 id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
かずほ(プロフ) - 初めまして！昨日、シンエヴァ見に行って再び エヴァ 火付いてしまいましたw カヲルくんのとこ泣きました！ こちらの夢小説シリーズ読ませて頂きました！更新楽しみにしてます！ (2021年3月19日 19時) (レス) id: 4ea2670edc (このIDを非表示/違反報告)
RUKA(プロフ) - 長々とコメントを書いてしまい、ごめんなさい。続きがとても気になります。更新頑張ってください。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 4977de0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅坂紅子 | 作成日時：2016年2月14日 1時
