春の結び目《桃》

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それから。



ジャス民の間では花冠がブームになった。


もちろん原因はあの雑誌。


俺のファンをはじめ、今開催中のライブツアーには花冠を被った女の子が溢れかえるようになった。




可愛いからええねんで？



でも、俺の中の1番は変わらん。




ファンの人を見るようにして

あの人の事を想起する。



ファンの人を見るようにして

あの人の事を捜す。




ごめんって。


せやけど、無意識にもそうしてまうねん。





ファンの人の間では

小瀧望=花冠

という方程式まで出来つつあり


たまたま仕事で会ったスタッフさんにも花冠作れるの？って聞かれたりするようになった。




その都度、どこか苦しくなる胸。




知って欲しいのは貴方やないねんって、思ってまう。



世間にその事が知れ渡った所で、俺の仕事に何か影響がある訳とちゃうねんけど

だったら、知れ渡って欲しくなかったとも思う。


あの人との、思い出やから。


誰にも触れてほしくない、俺らだけの瞬間やから。





でももう遅いな。




今やって、ほら、花冠を被った可愛いファンの皆が

俺に精一杯の声援をかけている。




俺もそれに、精一杯手を振り返す。



ライブは楽しい。


他の仕事ももちろん好きやけど、こうやって俺らに会いに来てくれた人と一緒に、同じ時を過ごせるのがホンマに楽しい。


力も出るし、元気も出るし、


どっちが幸せにしてもらっとるのか分からんよな。


それが、ええねん。

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