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67. ページ17

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「あーあ。もう、アカンわぁ〜笑…はぁ………ほんまに、……昔の自分ら見てるみたいで、苦しいわ。」


「僕らの、計画、失敗しますかね…」


「知らんよそんなん。…でも、諦めてへんやろ。笑」





そう言った彼の目は


僕の瞳を捉えて離さない。




諦めてない。


せやで、諦めるわけないねん。




僕は、Aと一緒に抜け出して


遠く離れた場所で


見つからん場所で


またAと一緒に幸せになるんや。





「……同じ実験体としても、職員としても、絶対言うたらアカン事言うてええか?」


「…はい。」


「………逃げるなら、協力するわ。」


「え、」


「エレベーターの横の扉、階段になっとんねん。その階段を1階まで上がって目の前の扉を開けて右に曲がるとすぐ近くに非常口がある。その扉を開けて中の廊下を進んですぐの左側。下の方に小さな排気口がある。その格子、簡単に開くから。智洋の体ならギリギリ通れると思う。そしたら、外、出れる。」


「…どうして、」


「…あーあ。まさかこの秘伝の抜け道を誰かに教える時が来るとはなぁ〜…まぁ、俺らが通れんかった道や。代わりに通ってやって。笑」


「…職員さん、……」


「外にも沢山職員が居るはずや。それにあちこちに防犯カメラが付いとる。…せやけど、最悪な事になぁ、笑…今、そのあちこちに付いとる防犯カメラ、壊れとんねん。」


「え?ここだけやなくてですか?」


「そ。どっかの誰かさんが壊してもうたんやないかな。…桜の木、分かるよな?あの木のある丘を通り過ぎてもっと奥に行くと、森の中に鉄格子の扉がある。残念やけど、そこと正面玄関以外は高い柵で囲まれとって抜けられへん。せやからそこから頑張って逃げろ。」


「……はいっ、!」


「1階までは俺も着いてく。…後悔は、せんようにな。」


「分かりました。職員さんっ、……淳太、さん…!…ホンマに、ありがとうございます!」


「…うん。…よし、最初で最後の、大冒険や。」





彼は、これから起こるであろう最悪の事態なんか、微塵も考える事もない、

そんな清々しい青空のような表情で

僕の頭を撫でた。




その手は、とても、


あたたかかった。

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#TODAY(プロフ) - キャラメルさん» 初めまして!!読んでくださってありがとうございました!他には無い話を書きたくてだいぶファンタジックになってしまいましたが、難しくは無かったでしょうか…(汗)Shadowsを聴いた時はこのお話を思い出して下さったら幸いです。他の作品も頑張ります!! (2021年12月31日 21時) (レス) id: 3e33249399 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - #TODAYさん初めまして!この作品の世界観にぐっと引き込まれてしまい、思わず感想を伝えたくてコメントさせて頂きました!!!最後の方は読みながら本当に泣きそうになりました!他の作品も読ませていただきます!最高の作品に出会えたことに感謝します! (2021年12月31日 13時) (レス) @page35 id: 826f2c597b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:#TODAY | 作成日時:2021年9月15日 16時

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