63. ページ13
.
太陽が傾いて、
段々と寒くなってきた。
太陽が建物の影に入る。
さぁ、そろそろかな。
「あの、職員さん…」
「…なんや。」
「A、遅くないですか？」
「あぁ、なんか新しいスケッチブック取りに行っとるって連絡来たで。」
「…それ、ほんまですか？」
「…どういう事や。」
「スケッチブックならまだ全然残ってるはずですよ？あんまり使っとらんし…」
「……何が言いたい。」
「何がって言うか…僕はただ、単純に、Aを心配しとるんです。帰ってくるのが遅いから。」
職員さんは依然、顔色を変えない。
あと、もう少し押さなあかんかな…
その時やった。
僕の心臓は
ドクリと大きな音を立てた。
「智洋、お前、Aの事好きやろ。」
「…え、？」
「分かりやす過ぎんねん。…Aの事が愛しくてたまらんやろ？ずっと隣にいて欲しい、彼女に傷ついて欲しくない、彼女が他の人と仲良くしとるとムカムカする、他の人に向けとる笑顔を自分に向けて欲しい。」
「…… っ、」
「それが好きって事や。愛しとるんや。お前は、Aの事。」
「………」
「けど、残念やな。」
「………え？」
「この建物の中におる限り、その恋は実らん。」
「なん、で…」
「いくら好きでも、お互いが付き合ってると言い張っても、引き剥がされる時がくる。それには逆らえん。」
「………」
「好きでおってもええで。せやけど、…自分の事見失うようなヘマはせん事やな。」
好き。
愛しとる。
そう、それでええやん。
僕は、Aの事が好きで
この上ないほどに愛してるんや。
「好きです。…Aの事。」
「………あっそ。」
「心配なんで、見に行っても良いですか？」
「…終了時間までまだ時間あんで。」
「…心配なんです。」
「………」
「…お願い、します。」
「…分かった。」
職員さんは
僕の目を見て何を考えとった？
僕にはそれを感じ取る事が出来んかった。
Aが帰ってこないまま
僕は桜の木の下から離れた。
何もかも、全て
もう、これで最後になる。
職員さんに連れられ、さっきAが去っていった方に足を進める。
A、
どうか、作戦が上手くいってますように。
その事ばかりを考えていた僕は
隣を歩く職員さんが
深いため息を着いていたことに
気が付かなかった。
「…ほんま、しょーもない……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
#TODAY(プロフ) - キャラメルさん» 初めまして！！読んでくださってありがとうございました！他には無い話を書きたくてだいぶファンタジックになってしまいましたが、難しくは無かったでしょうか…(汗)Shadowsを聴いた時はこのお話を思い出して下さったら幸いです。他の作品も頑張ります！！ (2021年12月31日 21時) (
レス) id: 3e33249399 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - #TODAYさん初めまして！この作品の世界観にぐっと引き込まれてしまい、思わず感想を伝えたくてコメントさせて頂きました！！！最後の方は読みながら本当に泣きそうになりました！他の作品も読ませていただきます！最高の作品に出会えたことに感謝します！ (2021年12月31日 13時) (レス) @page35 id: 826f2c597b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：#TODAY | 作成日時：2021年9月15日 16時
