｢助けて｣なんて虫が良すぎる。《青》〈1〉 (ページ48)

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いつも通り、

では、なかった。

彼の低いハモリ、高い身長、笑顔、

何もかもが、自分たちの支えであったと

彼のいないステージで、初めて気付いた。

「ありがとうございました！」

「これからもジャニーズWESTよろしくお願い致します！」

「お願いします！！」

メンバーの心からの叫びは

この電波を通して、一体どれ程多くの人に届いたのか。

誰に、届いたのか。

曲が終わりカメラが切り替わった。

それでもまだ、

メンバー皆、少し力の入った笑顔で手を振っている。

あぁ、俺ら、足りひんな。

神山は直感でそう思った。

"あっ、す、すみません…"

"大丈夫ですか？"

"スタッフさん…！"

そろそろはけようかと思った時

客席1列目、ちょうど淳太の真ん前の辺りがザワザワと騒がしくなった。

何かあったのかと顔を向けると、

そこには手を赤く染めた女の人がいた。

"すみません、鼻血出ちゃって…"

直ぐにスタッフの人が駆けつけ、

大事にはなってなさそうだったので、神山はステージから降りた。

その時だった。

あの時の記憶が鮮明に蘇るほど

聞いた事のある音が背中側から聞こえた。

重い物を落とした時の様な

鈍く大きなドンッという音。

反射的に振り返ると

ステージに立っていたはずの5人は、いつの間にか4人になっていて、

あんなに頑張って手を振っていた淳太だけが

ステージに横たわっていた。

"淳太…！おい！"

"淳太くん！？淳太くん！！"

集まるメンバーやスタッフと同じように

神山は急いでステージに戻り駆けつけた。

そこにはメンバーに揺すられるも全く目を開けない淳太が。

ファンの人も何事かと心配の声をあげて

ステージセット内は瞬く間に騒音に包まれた。

朝から体調が悪かったのか。

無理をしていたのか。

何故倒れるまで誰にも言わなかったのか。

そんな事、目を瞑り続ける彼に問いても答えは帰ってこない。

直ぐに来た救急車により淳太は病院に運ばれた。

それでも心配が晴れることはなく、

病院へ移動する車内ではマネージャーを含めた誰一人

言葉を発しなかった。