｢助けて｣なんて虫が良すぎる。《青》〈1〉 (ページ34)

今日:12 hit、昨日:15 hit、合計:41,161 hit

34. ページ34

.

「自分、のこと、刺したのは…」

「うん。」

「赤いの、見たくて…」

「赤？」

「刺したら、…痛いんかなって。」

「痛いやろそりゃ。」

「自分の事、刺したこと無かったから……あの人、痛かったかなって、」

「……ん、？」

「…あの人、刺した時、泣いとったから。痛かったんかなって。」

「刺した時…？何言うとんの？笑」

「………」

「流星？」

「ちょっと、疲れた。寝るわ…」

「…おう。またな。」

「ん。」

ベッドに潜り込んだ彼の頭を2回撫でて

中間は病室を後にした。

直ぐにメンバーとマネージャーに藤井が目を覚ましたことを報告すれば

今からでも見舞いに行きたいと言う人がちらほら見受けられたがさすがに止めておいた。

スマホをポケットにしまい廊下を進む。

家への帰りのタクシーで揺られながら

思わず見上げてしまう程に高く広がる青空に目を向けた。

赤。

ただそれが見たかったが故に自分を刺したのか。

赤色のモノなど探せばすぐに見つかるのに。

いや、きっと彼が見たかったのは赤色のモノでは無い。

血液だろう。

中間は明らかにいつも通りでは無くなっている藤井の心をどうすれば救えるのか

青空を見つめながらそればかりを考えていた。

突然血液を見たくなる事なんて、そんな事あるのか。

だとして、自分自身を刺す必要があったのか。

その時、軽く流した彼の一言が

頭の中をぐるりと回った。

"あの人、刺した時"

自分の事を"あの人"と言っているのかと思っていたが、それはきっと違う。

小瀧の足に包丁が刺さったらしいが

自分で持ってたものが、藤井が倒れた反動でたまたま刺さったと言っていた。

どうして夜中に小瀧が包丁を持っていたのかは、結局詳しくは教えてもらってない。

夜食でも作っていたのかと思っているが、

倒れていたのは玄関で…

藤井の言った"あの人"とは誰なのか。

そして、彼は誰かを刺した事があるのか。

いくら考えても答えが分かるはずもない中間は

モヤモヤした気持ちを抱えながら家に帰った。

そして、翌朝。

夕方からの仕事のため、ゆっくり起きようと思っていた中間だったが

昨日の藤井の一件があってか、思ったよりも早く目が覚めてしまった。

何となくつけたテレビでは

朝のニュース番組が発色よく映っている。