見過ごせない話 ページ8
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妙である。
というか、不快である。
俺は、例のエンパイアラインを身に纏って器用にチェイスするAを見ながら、そう呟いた。
「……しょうがないんじゃない、衣装の影響もあるんだし」
耳ざとく聞き取ったノートンが、試合の様子をメモしながら言った。
「だとしても、納得がいかねぇ。あれは影響を受けすぎてるだろ」
「身体的影響はあまり見られないから、君が文句を言ったところでナイチンゲールも動かないだろうね。少なくとも、あと二日はこの調子だと思った方がいい」
他人事だな、実際そうだが。
俺は長々とため息を吐き、観戦用のモニターへ視線を移した。
モニターの中では、半分ダメージを負ったAがイライに呼び止められていた。大方、Aはダメージを負っていないと思い込んで、ハンターへチェイスを挑もうとしていたのだろう。
それを見て歯を食いしばると、ノートンは面白そうに俺を嗤った。
「お似合いじゃないか、Aとイライ」
「……ノートン、アウトサイダーと白黒無常がお似合いだって言われて嬉しいか？」
「嬉しいことに、僕とアウトサイダーは永遠に結ばれてるから」
ノートンはさらりと返すと、腕についている時計で時刻を確認した。
「それじゃ、僕はもう行くよ。アウトサイダーが新しい小説を持ってきてくれるんだ」
こちらに顔を向け、さっと腕を上げて見せた彼の表情は、滅多に見せない晴れやかなものだ。あの少女は、このノートンが本当だと思っている節があるようだ。自身でも、ノートンに二面性があることや性格に難があることは理解していると言っていたが、優しい方へ、温かい方へと流れてしまう彼女のことだ。また、この荘園で何かをやらかすかもしれない。
そんなことを考えていると、鐘の音が一度だけ響いた。気づけば目の前にノートンはいない。
今日の試合が終わった音の様だった。
「……どっちが勝ったか、見てなかった」
まあ、自由人と占い師、「囚人」に医師ときて、ハンターが芸者だったのなら、ギリギリで勝てただろう。
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作者名：トバリ | 作成日時：2020年11月9日 22時
