不満 ページ3
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初めて目にする彼女……A＝コタール……の印象は、と聞かれれ「舐めてるやつ」としか言いようがなかった。
自分は幽霊だ。なんて言い張り、攻撃を受けることを考えていないような服装。緊張感もなければ、協調性もない。そもそも、彼女に課されているゲームのシステムは面倒くさすぎる。
そんな風に文句を言いながら、彼女を見るたびに目で追っていれば、気づけば……なんて。
「……俺はティーンかよ」
廊下で頭を抱えながら呟けば、隣を歩いていたノートンに鼻で笑われた。
隣のコイツも、相当、食えない奴だ。だがAのような可愛げは欠片も持ち合わせていない。
彼女が気になりだしてから、何かにつけて彼女と他人を比べる癖がついているように思う。
「笑うな、キャンベル」
「……純なサベダーは見ていて楽しいから」
「よっぽど見殺しにしてもらいたいようだな」
彼の言葉に、何も考えずに相手をにらめば、ノートンは驚いた表情で口をつぐんだ。
なんだ。ちゃんとした表情もできるんじゃねぇか。
新しい発見に俺が口元を緩ませると、ノートンは俺の肩を叩いて廊下を走っていく。俺のそばから離れる瞬間、彼は「さっきの顔、悪いことは言わないから彼女には見せない方が良いよ」と呟いて行った。
焦ったような彼の顔に、俺は一人、廊下の真ん中で首を傾げた。
「あれぇ、なわぶだぁ。試合、終わったのぉ？」
後ろから急に声がし、俺は飛び跳ねるようにして振り向いた。
気配を感じさせない彼女に俺が殺意を抱けないのはなぜだろう。
声の主はクスクスとさざ波のような笑い声を上げながら、俺を見て目を細めた。
白く、透き通るような洋服が俺の目の前で翻る。俺がそっと手を伸ばせば、材質がどうなっているのかわからないが、まるで湯気のように腕にまとわりつきながら消えた。
「なわぶは私の服が好きだねぇ」
「……」
何もわかっていないように彼女が笑い声をあげる。
俺は黙って、いつもなら誰にも見せないような笑みを浮かべた。
彼女の服が揺らめくたびに、俺のことを無意識のうちに拒絶しているように感じてしまう。彼女いわく、「幽霊が人に触れられたらオカシイ」とのことらしいが。
ぬぐえぬ気持ちを、悟られないように口角を上げた。
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作者名：トバリ | 作成日時：2020年11月9日 22時
