無理に ページ9
Takanori.I
悲しいことを思い出させてまで知りたいって思わない。
ある程度Aの家庭環境を聞いてれば、察することばかりだ。
「A、言いたくなったら聞かせて。
今はさ、Aもまだ整理ついてないと思うから、
無理に語らなくていい」
『っ』
「焦んなくて良いから」
そう言って頭を撫でると、Aは泣きじゃくった。
Aは泣き虫って言うけど、人の目があるところでは基本泣かない。
ツアーなんかでも、Aは涙を浮かべても零すことはしない。
誰かに弱い部分を見せたがらないで、我慢する所がある。
けど、俺の前でだけは泣いてくれるから安心出来る。
少し泣き続けると、疲れたのかAは眠ってしまった。
それはそうだろう、まだ日が完全に昇り切ってない。
俺は彼女を抱えて、寝室に戻った。
「A、お休み。
愛してるよ」
起きる気配が無いAに布団を被せて、キスをした。
俺はそんなAの隣に体を寝かせて、瞼を閉じる。
Aを抱きしめて、俺も再び眠りに就いた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二人してアラームの音で目が覚めた。
「おはよう、A」
『おはよ……』
洗顔も、歯磨きも、バラバラに終わらせて準備を整える。
Aは簡単にファンデーションと眉だけのメイクをしていた。
『話が纏まったら、話していくね』
「分かった。
けど約束して欲しいA」
『何を？』
「俺は、Aに過去のことで辛い思いをして欲しくない。
だから、無理に思い出そうとしないこと」
『剛典……』
「良い？」
『………分かった』
目を見て約束した。
俺はAの顔を見て微笑むと、Aの前髪にキスをした。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年7月4日 0時
