幸せな…… ページ49
久しぶりにゆっくりお風呂に入って、眠った。
ふと目が覚めると、隣で剛典が眠ってて、子供はベビーベッドに居た。
しっかりと対応されててさすがだなって思う。
「……ん、起きた？」
『あれ、それこっちのセリフじゃない？』
どっちもしっかり寝起きでして。
剛典がもそもそと動いてスマホを見ると、表示された時間は深夜三時。
『っ、三時！？』
「しーっ！」
『っ！』
思わず声を上げてしまって、二人して響輝を見ると、
彼は身動き取らないで熟睡している。
誰に似たのやら。
「A」
『んー？』
「いつもごめんね、一人で子育てさせて」
剛典の言葉に私は言葉が出なかった。
それを良いことに彼は話し続ける。
「初めての子供で、不安だらけなのに、俺は仕事で帰れなくて。
でもAは弱音も吐かないで響輝見続けてくれてさ。
今日、響輝を見ながら家事して、Aが前に言ってたのが分かった。
確かに静かに寝てる方が不安だなって、思った。何も音しないから」
『うん……』
「A、Aは今幸せ？」
剛典は私を抱きしめて、声を震わせた。
彼の温もりを感じて、私はホッと肩の力が抜けた。
『ずっと、考えてた。
子供が産まれて、命を抱えて、正直不安じゃない夜はゼロじゃない。
けど、だけど、不幸だって思ったことは無いんだ、私』
目の前が霞んだ。
温かいものに触れる時、触れ合う時、その心が爆発する。
『剛典、私不幸なんて思ったことない』
「A……」
『愛してるだった一人の人に愛されて、その人との子供と過ごせて。
不安なこともあるけど、それでも、それすらも、愛おしく感じる』
「……っ」
『愛される喜びと、愛する喜びを、あなたに教わってさ。
私、世界で一番の幸せ者なんじゃないかって、いつも思う』
目が合うと、また二人揃って、いつの日かみたいに涙を流してた。
綺麗に鼻筋を通っていく涙。
『だから剛典、私は、あなたのおかげで誰よりも幸せだって断言する』
「A……」
『剛典は？』
「俺も、同じだよ。
凄く幸せだ」
二人して泣きながら過ごしてると、伝染するように響輝も泣き出して。
二人でミルクをあげながらも、
私達はどっちも溢れるものを止めることは出来なかった。
私達が流した涙には、悔し涙も、悲し涙も沢山ある。
けれど、今の涙は、幸せな涙だと喜んで流し続けた。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年7月4日 0時
