寝息 ページ48
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Takanori.I
メンバーが帰った後。
Aは俺らが買ってきたおかずをつまんでた。
キッチンの隅っこで。
「なんでそんな隠れてんの」
『……何となく』
多分、久しぶりに会ったから緊張してるんだろうな……。
俺が正面にしゃがむと、ほうれん草のソテーを口元に寄せてきた。
「あー」
良い感じにバターとブラックペッパーが混ざってる。
ベーコンの風味も良い。
『おいし？』
「うん、おいしいよ」
『今度ソテー尽くしやってみよっかな』
「良いんじゃん？
食べたいから落ち着いた時にしてよ」
『落ち着く時あるのか』
二人してしゃがみながら会話してるこの光景は不思議だろう。
響輝はミルクを飲んで寝てて、小声なのも余計。
『美味しかった』
立ち上がったAは少し眠そうだった。
最近俺もバタついてたから、続けて寝ることが無かったんだろうな。
「A、」
『ん？』
「こっちの片付けと、響輝の夜までのミルク、俺やるから寝てきな？」
『……いいよ、剛典疲れてるでしょ』
「お互い様だよ」
『これからが忙しい時期なんだから、剛典休んでて。
私は器用にやるから』
「俺が心配なんだけど」
じーっと見つめ合うこと10秒。
折れたのはAだった。
『分かった、じゃあお願いしてもいい？』
「勿論、ダメって言うわけないでしょ」
Aは最後に俺をギューッと抱きしめて、俺も抱きしめ返して。
少しするとAが俺の頬にキスを残して離れた。
「口にはしてくれないの？」
『お風呂入ってからね』
「ははっ」
Aはしてくれなかったけど、俺がAの口にキスをして、
Aが脱衣所に入るのを見送った。
響輝は起きることなく、静かに眠ったままで、
俺は今の内と片付けを急いだ。
食器を洗い終わって分かる。
子供が静かな瞬間って凄く怖い。
洗い終わって響輝を見ると、静かに寝息を立ててる。
「ずっと一人で、不安だろうな……」
お風呂もゆっくり入れない、家事もゆっくりできない。
一人で産まれたばかりの命を抱えるA。
俺は仕事を続けて、Aに気を使われてる。
「……これで良かったのかな」
ボソッと呟いたその問いかけに、返ってくる言葉は無い。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年7月4日 0時
