守らせて ページ34
撮影日、私達は某所に訪れていた。
取り敢えず妊娠が分かりにくいダボッとした格好で。
したら彼も同じような服装になってた。
岩田「似てるじゃん」
『合わせてきた？』
岩田「まさか」
フリーな感じで撮るって言ってたから、そこを歩きながら見て回る。
途中お店があったらそこに入ってゆったりと過ごす。
岩田「おいしい」
『ね、ほんのり甘いし』
岩田「それちょうだい」
『ん』
この間も常に撮られてる。
撮影も程々に今の隙に、インタビューが入ったりする。
こうして、撮って休んで、撮って休んでを一日して、
旅館に着いた。
「景色綺麗だよ」
二人だけって当てられた部屋で、私達は寄り添って景色を見る。
ただ静かにゆったり過ごしてた時、私は決心した。
『剛典』
「ん？」
『言い訳するつもりは無い。
けどさ、今の時期はきっと何考えても悪く考えちゃうかもしれない』
私はこの前から自分なりに考えてた気持ちを伝える。
剛典はカッコよく障子に凭れて私を膝の間に抱えて、
私は剛典の自慢の胸筋に凭れて、彼の心音を聴く。
こんな体勢だけど彼は、私の言葉を黙って聞いてくれる。
『不安になって、上手く言葉にできなくて、モヤモヤして、
もしかしたら剛典に八つ当たりみたいになるかもしれない』
「ん」
『それでも、……それでも、剛典は、一緒に居てくれる？』
剛典を見上げると、彼はいつもの優しい顔をしていて。
優しい眼差しが向けられて、少し恥ずかしくなるけど、
彼は優しく微笑んでおでこを合わせた。
「勿論、ずっと一緒に居るよA。
それにさ、Aはお腹の子供を、その小さな体で守ってくれてる。
俺だって父親なんだからお腹の子供と
Aを旦那として家族として守らせてよ」
『……っ』
「ずっと独りで不安だったと思う。
けど、どんな事があっても俺は絶対、家族を守るって約束する」
守らせて。
そう言って剛典は瞼を閉じた。
私もその言葉を受け入れて、頷くと、自然と唇が重なる。
『誰も、私を拒んだりしないよね……』
「する訳ないじゃん。
俺らって案外、固い絆で結ばれてるんだよ。
だからAのことも、最初から受け入れてる。
あとは、Aが寄って来てくれるだけだ」
剛典はそう言って私の髪を梳くと、月を見上げた。
「今日暖かいね」
その言葉の意味に気づいた私は
『明日も晴れそうですね』
と返して、彼が見上げている月を見た。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年7月4日 0時
