好きだから ページ33
Takanori.I
駅で解散して、仕事組は仕事へ、帰る組は帰る組で別れた。
俺らも家に帰ると、俺は真っ先に風呂場に向かった。
Aが首を傾げる。
『何そんな急いで』
「ホテルのシャンプーの匂いがめっちゃ苦手でさ俺」
『あっはっ、コンビニでトラベルセット買えば良かったのに』
「勿体無いじゃん」
俺が風呂場に籠って五分、Aが俺の服を一式置いててくれた。
後なんか洗濯機がこの短い間で回されてる。
「A？」
『あ、おかえり』
首にタオルをかけて出ると、Aがソファーでボーッとしていた。
「どうした？」
『んーん、何でもない』
いつもより緩い言い方に、俺は髪を拭きながらAの頬に手を伸ばす。
『剛典……？』
「A」
『ん？』
「俺はAが好きだから、一緒に居たいって思う」
『何急に……』
「黙って聞いて」
俺は屈んで目線を合わせる。
Aも俺の言葉の通り、黙って俺を見てくれた。
「もし会えたら、一緒に話しながら帰りたいって思う。
それはメンバーと居てもそう。
メンバーのことも、Aのことも好きだから、一緒に居たい。
Aと俺はよく喧嘩もするけど、その時間すら俺は愛おしく思う。
出会った頃を考えると余計にそう思えてくる。
そうやってコミュニケーションとってさ、Aのことを知りたい。
Aが今何に迷ってるのかとか、どんな気持ちなのかとか、
何か不安なことがあったら、気づいてあげたいから」
Aは目線を落として、唇を噛み締めた。
「来てくれたのは凄く嬉しかった。
Aに三代目としての俺を見せれて嬉しかった。
会えて嬉しかった。来てくれてありがとう」
『ん……』
「メンバーに気を遣ってくれるのは凄く有難いし、
そういう所本当に偉いなって俺実感してた。
けどさ、今度からはそこまで気遣わなくて良いんだよ」
『メンバーだけの話とか無い？』
「そんなのミーティングで話すことできるから。
わざわざ食事までそんな話しないって」
俺が笑うと、Aはそっかって肩の力を抜いた。
その時を狙ってた俺はAを抱きしめる。
「自分はメンバーじゃないのにとか、そんな考えないで。
寂しいじゃん、そういうの」
『……ん』
「同じ事務所の仲間でいいんだよそういうのは」
な？
って言うと、Aは頷いてくれた。
家に帰ってきて、Aを抱きしめて実感する。
Aと過ごせて嬉しいって。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年7月4日 0時
