愛情 ページ28
帰宅後、私が着替えを済ませてゆっくりしてる時だった。
「A、ごめん」
『何急に』
「これから迷惑かけるかもだから、先に謝ります。
これをご覧ください」
そう言って剛典はスマホのチャット画面を見せてきた。
私は受け取って、中身を見てみる。
『…………』
奥さんにバレなきゃ大丈夫。
バレても事務所が何とかしてくれるよ。
あなたに被害がいかないようにしますから。
『ぶっ、あっははははは！』
流石に笑いこらえきれなかった。
私は剛典にスマホを返して、溢れてきた涙を拭う。
『どうすんの？』
「断ってはいるけど、多分撮られてる。
休憩時間に……」
『HIROさんの方が黙ってないんじゃない？
連絡してみたら？』
「……Aの気持ちはどうなの？」
『剛典が悪くないって知ってるのに、何を疑うの？
あれだけ毎日愛情感じて、あなたがぽっと出の女に行くって思ってない』
私達は毎日下着姿で鏡の前に立って写真を撮ってる。
この子の成長を感じたいと、剛典が言い出したことで。
私のスマホに保存されてる画像1枚1枚が、
見てるこっちが恥ずかしくなるくらいに愛情を感じるそれ。
「世に出回らないように対策はするって言ってた」
『なら良いじゃん。
けど何かあったら私も一緒に表に出るから』
「ごめん」
『何で謝んの』
私は剛典を抱きしめた。
優しい仮面をした王子様は、内心で何を考えてるか分からない。
純粋なファンには何も無い。
けど、こうやって周りを巻き込もうとする人には容赦無い。
『剛典、信じてるからね』
「うん」
いつも天然な岩ちゃんって可愛がられてる三代目の末っ子。
けど、彼は頭が良い。
「今週中に終わらせる」
彼はそう言ってキスを落とした。
重ねるだけのキスから、どんどん深くなるそれに、私は胸が熱くなる。
「……」
『たかのり、』
「……先生はなんて？」
『大丈夫って言ってた。
幸せが、何より大事なんだって』
「なら、沢山幸せになろ」
そう言って剛典と私は、いつもより優しくゆっくり肌を重ねた。
この瞬間の彼の表情は、彼女が見られないもの。
『っ、』
「何考えてんの？」
『いやっ、しあわせだなって……っ』
「ふっ」
剛典の頬に手を伸ばすと、彼は顔を近づけて、口付けを交わした。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年7月4日 0時
