チート夢主大戦争【オリジナル】

第25話：再三申し上げますが、びぃのえるでは御座いません（３） ページ26

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「聞いたところによると、お前たちは幼稚園時代からの幼馴染なんだってな!良かったじゃないか時雨雪、久し振りに会えて嬉しいよなぁ!」


「……え」


間の抜けた声を出しながら一瞥したところ、色素の薄い少年は控えめに、しかしどこかしら圧を感じさせる笑みを浮かべながら距離を詰めてきた。薄気味悪さを感じた或斗は、自分の手を包み込む白魚の様なその手を振りほどこうとしたものの……見かけによらず握力が強いのか、そうはいかなかった。


教師が楽しそうに何やら友情についての教鞭を垂れている間、どうしようもならなくなった或斗は、一先ず唐突に飛び出した想定外の単語を解釈すべく、記憶していた辞書の単語解説を参照してみた。


――幼馴染:幼少期に親しくしていた同年代、またはその間柄。


――阿部(担任教師;26)は何か勘違いしているんじゃないか?いやしかし、先程『聞いたところによると』と述べたことに鑑みるに、もふもふ野郎が阿部にそう説明したということか。『久し振り』と親し気に挨拶して来た上、尚もべたべたと手を握ってくる現在の状況からもそうとしか考えられないな。だが俺に幼馴染など存在しない。従って、此奴の証明は偽ということになる。


――じゃあ何で此奴はそんな嘘を吐いたんだ?俺(不登校児)の幼馴染を名乗るメリットなんてないだろ、面倒な連絡物届け係に任命されるだけだろうし。だとすれば、本当に何らかの関わりがあったのかもしれないが……しかし、やはり身に覚えがないな。それ以前に俺は、此奴の名前も知らないんだが……。


端正な仏頂面の顎に手を添え、この作品史上最長の思考回路を披露した或斗。しかし「幼馴染」という概念は、どう拡大解釈したとしても自分達の間柄を説明するには不適切である。一方は名前すら知らないのだから……。


ますます混乱する彼と対照的に満面の笑みの阿部は、朗らかに話を続ける。


「時雨雪は今年に入ってあまり……というか全く登校してないし、クラスメイト全員を把握出来ていないかもしれないが、有栖川は時雨雪と同じ2−Aなんだよ!まあ幼馴染だし、もう知っているかとは思うが」


「……有栖川……」


教師から発せられた固有名詞によって、或斗はようやく眼前の少年の名字を知った。しかしながら、やはり自分の記憶には彼の見た目と一致する有栖川は存在しない。中性的ではなく、漢の中の漢と言った風情の少年なら知り合いにいた気もしなくはないが……。


謎は深まるばかりであった。

第26話：再三申し上げますが、びぃのえるでは御座いません（４）→←第24話：再三申し上げますが、びぃのえるでは御座いません（２）

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