チート夢主大戦争【オリジナル】

第19話：出会って３秒で乞いに墜ちる（１２） ページ20

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希乃の天然具合に暫し唖然としていた摩那だったが、


――あれ……?


ヲタ芸の激しい掛け声により殆ど聞き取れないが、ミシ、ミシ……という何かが軋む微々たる音が、建物内の各所から響いていることに気が付いた。


訝しく思い、摩那はサイリウムの光線に目を細めつつ辺りを注意深く見回す。そして、上方を仰いだ時――ただならぬ異変を察知した。


「……!」


ストーカー軍団が曲に合わせて一斉にジャンプし、また着地する度に、天井の塗装が剝がれ落ち、錆び付いた鉄骨が剝き出しになる。更に、その骨組みは振動を抱き留めきれず、上下に激しく波打っていたのだ。


30年前に閉鎖されたここは、長期的に工業地帯を芯で支える中核的役割を担っていた。その長い歴史が裏付けるのは、築年数の長さ――単刀直入に言えば、物凄くボロいということだった。


「「「「「バーモ〇ティグレッッ!!フ〇ゴッッ!!シ〇ルッッ!!フ〇ブラッッ!!ブ〇ォッッ!!

ビ〇ラルッッ!!ヘ〇セイッッ!!ボ〇ーレッッ!!リ〇ピアパラブリサスッッッッ!!!!!」」」」」


ミシ……ミシッ……!


そんな老朽化の激しい建物内で5万もの成人男性が暴れまわり、久方ぶりに装置を作動させ、何度も高所から大量の油を同じ個所へ打ち付けているのだから、何事もないという方がおかしいのである。


先程から摩那の鼓膜を刺激していたのは、恐らく、工場本体が発する悲鳴だったのだろう。そしてその苦しみを悟った瞬間、摩那の脳裏に浮かんだのは――工場の寿命まで後幾ばくも残されていないという事実であった。摩那はすぐさま希乃を振り返り、今度はしっかり自分の意志を言葉に出した。


「早く逃げましょう!」


「……ふぇ?」


だが、ふわふわ美少女は迫りくる命の危機を感じ取っていないらしい。とは言え一から説明している猶予は無い。摩那はぽやんと首を傾げる少女の華奢な手を取り、行くわよと強引に引っ張った。しかし、


「っ!?」


がくんと後ろへ引かれ、その場に尻餅を着いた。驚き振り返った摩那が目にしたのは、ぽろぽろと涙を溢れさせる希乃。その時摩那は、先刻希乃が逃げ遅れた理由の一つを知ることとなった。


「その足……!」


「ふぇぇ……っ」


「「「「「ス〇フリーッッ!!ア〇ィールッッ!!ナ〇ルッッ!!ナ〇ルッッ!!ス〇ナーイーッッ!!

ナ〇ィージュッッ!!ガ〇サッッ!!ハ〇ザッッ!!ハ〇トゥンシナーイーッッッッ!!!!!」」」」」


ミシッ……ミ”シッッ……バキィッッ!!!!

第20話：出会って３秒で乞いに墜ちる（１３）→←第18話：出会って３秒で乞いに墜ちる（１１）

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