58.雨は時に救いになる。 ページ29
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「……っサッパリしたー！大野さんも入ってきたらどうですか？」
智「…びっくりした。うん、俺も入ってくることにするよ」
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焦ったのかスマホのロックを掛け忘れてる大野さん。
……こうなると湧き上がるのが好奇心ってやつで。
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(……着信履歴)
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あった…。と心が歓声をあげる。
少しだけ震える指先でそれに触れると
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「え……？」
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一覧のところにバッ…と出るのが
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「やま、ざき、すずか？」
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ズラリ…と出る、その内ほぼ全部が山崎鈴香という名前。
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下にスワイプするも目まぐるしく回る「山崎鈴香」の文字。
……このふたり……。
鈴香さんには、お兄ちゃんがいるのに……。
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……嫌な予感がしたから、着信履歴を閉じてその着信履歴を開いたことを察されないようにその開いた履歴も消す。
そのスマホをロックして、元あった場所に置く。
……ソワソワ。
知らないことを知った私は、あまりにも落ち着けない。
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髪の毛をぱんぱんと拭いて時間潰し。
お風呂から上がってきた大野さんは、どんな顔してるかな。
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……いつでも笑顔だった鈴香さんの裏の裏。
傷つけるってどういうことだろう。
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「……鈴香さんか」
智「鈴香さん？」
「……え」
智「え」
「え」
智「いやいやなに」
「いつの間に」
智「今さっき」
「あ、ああ」
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大野さんは上半身裸。
顔真っ赤不可避で。私はもじもじしてばっかで。
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智「んはは、なになに見とれてんのー？」
「……っ！だったら上！着てくださいよ！」
智「さっき見飽きるほど見たでしょうに」
「うるさいっ！」
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けらけら笑ってる大野さん。
その顔を、1番近くで見てたいって思ってた。
……おもってた。
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「あの…」
智「なーに」
「今日、泊まっていっていいですか？」
智「…」
「だめですか……？」
智「かわいい」
「そうですよね、……いきなりごめんなさいって、え？」
智「いやいや、さっきまでうるさいとか言ってたのに今度は、もじもじしちゃって？新手のツンデレか？お？お？」
「〜〜〜っ！」
智「あ、また照れた」
「うーるさい！」
智「んっはっはっ」
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……ただ単に、しあわせ。
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年5月10日 20時
