57.呪われたみたく ページ28
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……行為が終わる。
脱ぎ散らかした服を拾い上げて着る。
後片付けをしてる大野さんの背中に抱きついた。
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智「ふふ、なによ」
「すごくすき」
智「分かったよー」笑
「すごいすき」
智「俺もだから、ね？ちょっと片付けしづらい」笑
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汗ばんだ背中。
乱れた髪の毛。
背中の跡。
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「すき」
智「わーったから！笑」
「ふふふ」
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私は呪われたみたいに大野さんに執着した。
すごく好きになった。
恐ろしいほど好きになった。
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どんなときも忘れられないあの顔と、A、Aって何度も紡いでくれたあの時と。
苦し紛れにAって呼んでくれたことと、ぎゅって手を繋いでくれたことと、
……嬉しいことなんていっぱいあった。
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智「お風呂入っといで、…汗、ベタベタでしょ」
「どこにあるの？」
智「廊下出てすぐのとこだよ」
「はーい」
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……大野さんから離れることがすごく惜しくて。
でも、お風呂入ってリフレッシュしたい気持ちもあったからお風呂にぱぱっと入ってくる。
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しっかり汗も流してしっかり体も頭も洗って。
さっぱりした状態でリビングに向かった。
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智「……だから、これで……って」
智「これで！いいじゃないですか！」
智「……これ以上、嘘なんてつけないです……。」
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スキップで、ウキウキな足取り。
……そんな足取りが一気に止まった。
大野さんの悲しそうな声がここまで聞こえてくる。
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智「あの子の顔、見る度儚くて悲しくて」
智「……想ってる以上、……もう嫌なんです」
智「やめたい……」
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ドアノブを捻って開けようとしたリビングへの扉。
大野さんの姿こそ見えないからもどかしい。
どんな顔してその言葉を紡いでるのかが気になる。
……誰を想って、その言葉を紡いでるのか気になる。
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智「葵がなんですか、アイツは関係ないでしょ」
智「あの子だけは傷つけないでください……」
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相手の声が微かながら聞こえるから。
……電話してるんだなぁ、と。
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……葵さんのこと、想ってるのかなぁ。
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そんな思い一心にドアノブを思い切り捻ってリビングに入った。
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年5月10日 20時
