56.オオノサン・カオ・メノマエ ページ27
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あとの流れは簡単だった。
……大野さんが私の後頭部を抑えて、キス。
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涙の味がして、ちょっとだけしょっぱい。
でもそれすらも恋をする。…みたいな。
…改めて考えると、ああ好きだなって。
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智「…Aちゃんさ。」
「はい…」
智「ほんとに、ほんとに偶然会えたって思えないんだよね」
「え……？」
智「必然的に会えた感じ…。」
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そう言うとまた２度目のキスが振ってくる。
ガシ…と私の後頭部を捉える右手は男らしくて力強い。
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智「……ごめん。」
「え？」
智「ごめん、汚してごめん」
「え？キスのことならなんも気にしてな…」
智「そのことじゃなくて」
「……？」
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ザーザー降り注ぐ雨はやむことも無く
土砂降りに向かう最中。
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智「葵って人のことも全部…っ」
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その瞬間だった。
雷が落ちたらしい。
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どんより暗くなる大野さんの部屋は、なんだかこわい。
……帰れそうにもなかった。
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……会話の続きは聞けそうにもなくて、
近いはずなのに、なんだか遠くて。
薄く見える大野さんの目がなんだか切ない。
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智「……ごめん」
「だからなんで謝ってるんです……」
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3度目、4度目、5度目、6度目……、
そんな幾度のキスが降ってくる。
途中、息ができなくなってはぁって吸ったら、
「おれ、そういう気分になってきちゃった」とかオトコノコな顔して言うから、胸がときめいちゃう。
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そのまま大野さんの流れに逆らえぬまま、
リビングのど真ん中で。
またまた幾度のキスを繰り返す。
……どんどんそのキスが深まっていくのは確かで。
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目を薄く開けると微かに苦しそうにしてる大野さんの整った顔が見えて、
……かっこいいな、とか。
そんなこと。
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「大野さん…」
智「ん？」
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優しく「ん？」って聞き返すところ。
安心するような微笑み方。
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「すごい好き。」
智「……俺もだよ」
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智「俺も、すっごい好き。」
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んふふ。って私が笑ったらそっちも、んふふ。って微笑み返してくれるから、安心して大野さんの手付きに翻弄されてった。
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年5月10日 20時
