42.心を刺すアンブレラ...sideO ページ14
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残った香りが、ここから離れさせることを強く拒ませる。
腕に残るのは、彼女が使ってるであろうシャンプーの匂い。
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智「……………………。」
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簡単に抱き締めたのは良いものの……。
……軽い男って見られてないかな。
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智「二宮……、ねー……。」
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今さっき買ったばかりのビニール傘はどっかへ吹っ飛び、
Aちゃんを都合良く家に上げようかと思ったら、「悪いですよ」の一言で断られ
遂に、俺は一人ぼっちになってる。
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智「……恋？」
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Aちゃんに、恋してる？
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いや、それは無いな。
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ーーーーーーー……じゃあなんで、家に上げようとしたんだろ。
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浮かび上がるのは、疑問ばっかり。
……でも、家に上げようとしたのは、少なからず好意を抱いてるってことなのか？
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智「…………わっかんねーな」
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濡れた前髪をかき揚げて1つ、息を吐く。
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降り止まない雨に紛れて、大粒の涙を流した。
俺は、なんでこんなことをしてしまったんだろう。
なぜ、あの子を裏切るようなことをしてしまったんだろう。
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智「葵……。かー……。」
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ひょっとしたら、あの子の笑顔を思い浮かべる度に、泣いてる気がした。
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智「……俺が悪いよ、ごめんね…………」
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純粋無垢な素敵で綺麗な子を、跡形もなく汚くしてしまったのは、
間違いなく俺のせい。
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その心も、何もかもを壊して
泣かせてしまったのも
俺のせい。
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君の隣に立つことを拒んだ、俺は
果たして、正しかったのかな。
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会いたいという気持ちに駆られる。
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智「葵………………ね。」
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年5月10日 20時
