今日:19 hit、昨日:8 hit、合計:4,410 hit
小｜中｜大
美しい男 ページ7
促されるまま、用意されていたスリッパに足を突っ込む。
「座ってー。あとよそうだけだから」
パタパタと小動物のような足音をたててキッチンに駆け込んでいく。
ローテーブルには２人分のサラダ。
ハンバーグを盆に乗せて、エマが笑顔を見せる。
「久しぶりに作ってみた。シゲくんより美味しくできてる自信は、あんまりないんだけど」
『そんなことないよ』の期待を華麗にスルーできたかどうか。
無言で突っ立ってるうちに、「座って」と微妙に圧をかけられて、ソファの前へと腰を下ろしてしまった。
ミネストローネとライスが追加され、テーブルからは飯が溢れ落ちそうだ。
「おまたせ！じゃあ食べよっか。いただきまーす」
朗らかなはずのエマの声がむなしく響く。
「うん、いただきます」
なるべく丁寧に、手を合わせた。
「美味しい？」
「うん、うまいよ」
料理教室に通ってる彼女が習いたてのハンバーグを作ったのはいつだったか。
ひと切れだけ口の中に押し込み、味のしないそれを咀嚼しながら、俺は箸を置いた。
「シゲくん・・・？」
「あのさ。ごめん、別れてほしい」
目は、見れなかった。
欠けたハンバーグを凝視しながら、それでも、はっきりと言葉にしたつもりだ。
「本当に、俺の勝手だから。そっちが悪いとか、そういうことじゃなくて」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Niina* | 作成日時：2023年8月2日 20時
