STAY WITH ME 2 (ページ29)

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美しい男ページ29

「あっ」

そこからはスローモーションのようだった。

エマが手に持ったものが鈍く光った。

それが長く伸ばされたカッターナイフだ、とわかったときには、もうAの指先はエマに届きそうで。

手を引け！そう脳が叫ぶ前に、押し出された刃物。

だけど、それがAに届く前に、何か大きな塊がAを突き飛ばしてエマに覆い被さった。

勢い俺も引っ張られて、倒れそうになるAを抱き止めたんだ。

「りゅ、へい・・・？」

腕の中で、呆然と元カレの名前を呟くA。

振り返ったら、それは確かに、間違いなく丸山隆平だった。

刺された。

頭の中にサイレンが鳴り響く。口の中がカラカラに渇いてる。救急車を呼ばなくては。声を発しろ。体を動かせ。

「隆平！」

Aが俺を押し退けてそいつに駆け寄った。俺の手を振り解いて、崩折れる男の体を抱き止める。

「隆平！！しっかりして！隆平！！」

Aが叫ぶ。やべぇ、頭が回らねぇ。

そう、まずは止血だ。圧迫止血。

「隆平、目を開けて！」

それから救急車を呼んで・・・

「これくらいで死ぬわけないでしょ！」

「へ？」

間の抜けた声は、俺と丸山さん、２人から発せられたようだ。

Aに抱かれている丸山さんがパチパチと不思議そうにまばたきをした。Aは、傷口を押さえていたらしい右手を少し開いてみせた。

「あー、これか・・・」

丸山さんの肘の近く。すっぱりと切れた傷があった。

ロンＴには血が滲んでたらりと流れ出ていたが、吹き出すほどではない。

大丈夫、これじゃ死なねーわ。

思わず大きく息をついた。